黄色い十月(1998.10.6)

黄色い十月(1998.10.6)


十月のカレンダー用紙は
黄色だ
それは83年7月の末
パニックディスオーダーに襲われ
タクシーに乗ったり降りたりした
発端の色だ

この十月はやさしい目が
隠れる月で
僕は何度かドクターに相談した
彼は言う
「密約は疲労ではない
 果たされるまでは」
「しかし 果たされた後は
 まさに疲労だ」
「黄色は
 単なる三原色のひとつにすぎない」
「カレンダーの黄色は
 ネガティブな黄色なので
 あのときの黄色ではない」

僕はヘモグロビンが多量の酸素を
体じゅうに運んでいることを意識する
十月 その十の形は
あの人の胸にかかる金属の十と同じ色だ

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(痕跡(1998.10.13))次頁(推理小説(1998.9.29))

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