梅干し(1999.10.26)
かすかに
紫蘇のにおいがただよう芝生の上
むしろの上のあの
揉みこんだ赤い照葉の名残だ
字は知らないが
草の名はすべて知っているあの人は
空のどこかにいる
大きなちくちくした繊毛のある冬瓜が
電線を伝ってずいぶん上のほうに成っている
「梅干しはね
三日三晩干すの
昼間しわくちゃになるの」
そしてすべての梅は朝露を吸う
すると露を吸い
膨らみ
昼間
また皺になる
「でね
ひっくり返すの
一つ一つ」
ぱたぱたぱたぱた
喫茶店のテーブルの上
すばやく見えない梅を
ひっくり返す
ぱたぱたぱた
「そうじゃなくてこうよ」
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