めぐる童話(2000.1.11)

めぐる童話(2000.1.11)


童話のなか
でも苦いお話の澪が

何度でも童話に帰れるよ
かすかな偏頭痛のさなかにも

クスリじゃないけど
飛行機から見える
はがねのように張った空に
メアリー・ポピンズは飛んでいるかもしれない

そして苦く
甘い
恋を知り始めるかもしれない

秒速で数える春を抜けて
街はたくさんの十六歳を
氷片のように留める

でね
少女の
毛糸の耳当てとマフラーが
搭乗口でたなびくんだ
それはぼくの童話で

それがまた
あなたの童話でありますように

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(ビンの中の羽(2000.1.18))次頁(朝はカレー(2000.1.4))

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