TK批評 by木棚


TK批評 from 某日記
オタク言説止まりが多いJ-POP批評とは違ってマテリアルでテクニカルなコメント。

原文は
「HP管理者日記」から転載。分割し見出つけなど編集してあります。

† 批評 from 某日記



99/4/1 小室哲哉総決算って感じの文章書こかいな。



●TKに出来ることは、もうないのか?

 4年連続作詞作曲部門印税収入日本一だった小室氏が去年ついに一位の座から落ちるという話が・・結果はまだ出てないけど小室自身の口から出てて、いつまでも今のポジションには居れないとか、同世代で現役バリバリのプロデューサーはベビーフェイスぐらいしか居なくてその彼も休業宣言に入ったとか悲観的な言葉が小室自身の口からたくさん聞かれてですね、その中で一番笑ったのがいまの若い歌手に「何を聴いて育ったの?」ってきいたら、「TLC、ローリン・ヒル、ミニー・リパートン、アレサ・フランクリン」って答えが返ってきて、「じゃあ、プロデューサーはみんな黒人なんだね」って言ったら「はい」って言われて、「じゃあ僕に手伝えることは何もないね」って言ったらまた、「はい」って言われたという小室談話で、話としては面白いけど、そんなに追い詰められてるのか?小室哲哉!って感じで。



●数値を分析すると、さすがあTK?

 普通に考えると、4年連続一位だった小室氏がフランスに半年ほど行ってる間に色んなバンドがベスト版を出して一位の座を取りに行ったと、年に四枚のオリジナルアルバムを出して、オリジナルだけで合計四百万枚は売り上げちゃう小室に対して、B’zが十年分のオリジナルアルバムの中からベスト版を2枚出して2枚合計で一千万行ったと、で、次の年もB’z十一年分の曲の中からベスト版を出して一位を取りに行くかってぇーと、オリジナルアルバムと同じ数のベスト版出してるのってサザンぐらいのもので、しかもB’zだって十年分のベストだから迫力があったわけで。しかもB’zは二人で一千万枚、小室は一人で四百万枚、結構良い勝負なんですよね。ってこと考えると小室氏が海外進出止めて本気で作詞作曲部門日本一を取りに行ったら行けると思うのが普通なわけで。



●TKをめぐる状況ってゆーか

 普通に考えるとさ、業界トップの悪口って言い易いジャン?映画だとスピルバーグ、アニメだとジブリ、ゲームだとプレステやスクウェア、政党だと自民党とか悪口言い易いでしょ。叩けばつぶれるような人の悪口って言っちゃ悪いなって気になるけど、業界トップの人達の悪口はさ、ジョークとして面白ければ、それだけで言えちゃうんだよね。スピルバーグなんか興行収入一位=市場・客に支持されてるんだから、それが最大の勲章ジャンって思うけど、でも、アカデミー賞ねらいで「シンドラーのリスト」とか「プライベートライアン」撮るわけで、アカデミー賞欲しいわけで、評論家ウケも欲しいわけで、悪口言われると傷つくわけで。小室なんかでもレコ大とか紅白出たいわけで、出たら出たでいつもより濃い目の化粧でがんばるわけで、小室系とかいう単語を悪口的に使われると傷つくわけで、なんか意外とデリケートなんだなと。 海外にも進出したいし、いつまでも日本一にいてもしょうがないしカッコ悪いってな言葉が本人の口からで出して、「小室の時代は終わった」「小室哲哉の音楽って一体なんだったのか」みたいな文章が雑誌に出たりとかするわけで、ここでもそういった感じのニュアンスでちょこちょこ書いてみよかなと。



●TKのプロデューサーぶりは?

 小室氏は自分のことをプロデューサーと言うけど、芹沢さんって人は売れてなかった頃のチェッカーズに一年間楽器演奏を一から教えたって言うし、あるプロデューサーはアーチストが気持ち良く音楽に没頭できる様にレコーディング室に百本のキャンドルを持ち込んでレコーディング室の電気を消したって言うし、あるプロデューサーは5・60年代の機材関係に詳しくて真空管サウンドを作り出すならこの人しかいないって言われてたりと、人によって役割やポジションがかなり違うわけですね。作詞も作曲も演奏も出来ない人に、キャンドル持って行ってもしょうがないし、シンセさえあれば音楽は作れるって人に、真空管に強いプロデューサーがついてもしょうがないし。で、小室哲哉さんの場合、作詞作曲編曲演奏をやってしまう。作詞作曲部門で一位に成るには基本的には(甲斐よしひろさん等の例外も在るけど)作詞作曲の出来ない人に曲を提供するのが主な仕事なわけです。じゃあ、作詞家や作曲家とどこが違うのって事になるわけですが、小室さんの場合、プロモーションやイメージ戦略まで請け負うってとこが違う。(観たんかいってツッコミは、個人的にメールでくれ)



●シリアスな小室マジック?

 具体的に、篠原涼子さんの例なんかは小室マジックの典型だと思うのですが、東京パフォーマンスドール=TPDという落ち目のアイドルを小室氏の力でトップアイドルまで押し上げたと。新人のアイドルってのは組織の後押しさえあれば雑誌やTVのゲストとして顔見せができる。ところが一度デビューして、CDが売れていない、曲がつまらない、B級・落ち目というレッテルが張られると、そのイメージからなかなか離れられない。マイナスイメージのあるタレントさんよりも、色の付いてない新人の方が売りやすいってのがある。小室氏はそこを上手く利用して、売れなくなって解散した東京パフォーマンスドールというイメージを払拭して、篠原涼子with Tとして、売り出したわけです。「元東京パフォーマンスドールの篠原涼子です」と言うと、「ああ、知ってるけど興味ない」となるところを「今度新しく出た新人の篠原涼子with Tです」と売り出すと、新人の場合取りあえずどんなものか見てみよかと、そこに小室哲也という後押しがあれば小室氏のパイプで色々な媒体に新人としての顔見せができる。これ以後、小室氏のプロデュースするミュージシャンはたびたび名前が変わるわけです。浜田雅俊はH jungle with Tに、遠峯ありさは華原朋美に、観月ありさはコンバーチブルに。安室の名前が変わらなかったのはスーパーモンキーズからソロになって名前がまだ新しい鮮度を保っていたし、小室氏がプロデュースする前から小室っぽい色に染まっていたので、イメチェンする必要がなかったからだと思われる。
 グラビアやCMやドラマで火が付いたアイドルの人ってのは何をやっても売れてしまう。そういう時期の人に近づいてって曲を提供するのが普通の作詞家・作曲家だとすると、一度底辺を味わった人にもう一度トップに立つチャンスを与える。一度色が付いてイメージが出来ちゃって、そのイメージがあまり芳しくない人をトップに押し上げるという比較的困難な作業に成功することで小室氏のプロデュース業がマジックと呼ばれるようになるわけで。



●TK独り勝ちの with H

 一つ目の小室マジックが篠原涼子(その延長線での華原なんかも含む)だとすると二つ目のマジックは「Wow War Tonight」でしょう。小室嫌いの人でもこの曲の悪口を言う人は意外と少なくて、今の若い子達の曲はわからんし、小室の曲もわからんと言う吉田拓郎でもこの曲だけは良いとほめてたし、若い子に高い声出させてる小室の曲なんてどれも同じだと言ってるアン・ルイスも、この曲だけは認めていた。ただその時、ダウンタウンを前にして言ったアン・ルイスの言い方が面白くて、「浜ちゃんTVでカラオケ歌ってるから、みんな(浜ちゃんの歌が)下手なの知ってるし、悔しいとは思わないんだけど・・・・すごいよね、この曲。上から下まで5音しかないんだよ。ドから始まったとしてソまでしか使えないの、一オクターブないんだよ。よくこんなので曲作れたよね。」歌が下手だとみんなが知ってる人をボーカルに添えてちゃんとした音楽を作ってしまった。これはれっきとした小室マジックでしょう。その評価の高い曲に対して小室本人はどう言ったかと言うと「実はこんなの誰でも作れるんだよ。これで吉本も音楽ビジネスのノウハウをつかんだでしょう。」ところが実際には奥田民夫が浜ちゃんをプロデュースしても、ティ・トワが今田耕治をプロデュースしても、浅倉大介がフェイレイをプロデュースしても、この曲ほどのヒットにはならないわけです。もっと言うと、同じくダウンタウンをプロデュースした坂本龍一、小室哲哉がアマチュア時代にYMOのコンサートに行って、自分達とのあまりのギャップに愕然として一生追いつけないのじゃないかと思ったというあのYMOの坂本龍一にも勝ってるわけです。誰にでも出来ると言った割には大成功してるのが小室氏しかいないのはどういうことかってことなのですが。
 「それまで吉本のヒット曲といえば間寛平の「ひらけひらけチューリップ」とかそんなんばっかりだったんですよ」と言う松っちゃんのセリフに対して「これで吉本も音楽ビジネスのノウハウをつかんだでしょう。」という言い方だったんで、今話題の人を使って真面目な曲を作ればヒットする、こんなのは誰にでも出来るってなニュアンスだと思うんですね。そのとき小室氏の頭にあったのは猿岩石の「白い雲のように」なんじゃないかなと。そういう意味ではゲイシャガールズなんかは「ひらけひらけチューリップ」的なコミックソングだし、今田耕治の「ナウ・ロマンチック」なんてのも半分ギャグ入ってるし、フェイレイに到ってはTVでレギュラーがあるわけでなし、これといった話題性もないし。と。個別に見るとどれもヒットの条件から外れてるんですね。とはいえ「誰にでも出来る」は謙遜兼自信の裏返しであって、額面通りに受け取ると出来なかった人達に対して失礼ですよね。



●小室マジックは15秒勝負?

 「Wow War Tonight」ってカラオケで聴くと、すごく平坦でのんびりして変化のない退屈な曲なんですね。よくこんなのがヒットしたなと思いますが、この曲のCMがすごかった。スローテンポのバラードが「Hey!Hey!Hey!ときには起こせよムーブメント」の叫び声と共に急にリズムが狂い出してアップテンポになり早口で何を言ってるのか聞き取れない浜ちゃんが何かガナって叫んでいるし、静かだった観客がいっせいに暴れ出すし、何かが起こってるけどそれが何なのか分からないという映像&音声で、ロックの初期衝動を見事に客観的に映像化したCMだったのです。ちなみに静かな場面から急に訳がわからなくなるきっかけとなる叫び声「Hey!Hey!Hey!」はダウンタウンの司会する音楽番組の名前でもあり、その番組のCMや番組内で何度となくこの映像が流される。この辺りはCMとのタイアップソングでヒットを生み出す織田哲郎・小室哲哉系の独壇場で、15秒や30秒の音で勝負したら圧倒的に強いですね。人によってはシングル曲の3分で勝負する人やアルバムトータルの60分で勝負する人、2時間のライブで勝負する人などミュージシャンごとに得意な音楽の長さが違うわけですが、小室哲哉という人は圧倒的に15秒から30秒のCM中心の音作りの人ですね。カラオケで一曲全部を聞くと変化に乏しく平坦でだらだらと間延びした感のある曲が、15秒のCMでは圧倒的な輝きを放ってるわけです。一曲丸ごと聴いたとき、平坦でのんびりしたスローテンポの曲なのは、もう単純に歌い易くするためでしょう。と、同時に、曲のどこかにインパクトのある見せ場を15秒分作らなければならない。その見せ場って奴をどうやって作るかですが、歌うのはプロの歌手ではない。でも、早口でガナったり、叫んだりは出来るだろうから、後はその叫んでる部分とのんびり歌ってる部分をどうつなぐかだろうなってな感じで作っていったのだと思います。あくまで想像ね。その様にしてできた浜ちゃんにも歌える曲ですが、浜ちゃんにも歌えるようにした結果が、カラオケでおっちゃん連中にも歌いやすい曲に仕上がることに成ったわけで。今の音楽をまったく聴いてないおっちゃんでもこの曲だけは歌える。歌詞の意味も他の小室系の曲と違って、H jungle with Tだけは分かる。例えば「温泉にでも行こうなんていつも話してる(省略)・・なんてでも/全然ひまにならずに 時代が追いかけてくる/走ることから逃げたくなってる」なんて詞は、浜ちゃんのイメージで作られた詞に見えて、実は小室の実体験にも見えて、その上30〜40代の中年男性及び働く女性のリアルな生活なのではないでしょうか。これは浜ちゃん=ボーカルという拘束が小室哲哉に名曲を作らした例です。



●拘束の中で名曲を作るTK

 2種類のミュージシャン、拘束のないところで自由に表現した方が名曲が出来る自己表現タイプと、クライアントの突きつける様々な拘束の中で音を作ったほうが名曲が出来る職人タイプに分けちゃうと、小室哲哉さんは明らかに拘束の中で名曲が出来るタイプですね。
 GlobeやTMNを聴けば分かるのですが、拘束がなくなると自分の好きな曲に似た音しか作れないんですね。良い例が、We are the worldそっくりのWe arethe oneという曲ですが、オリジナリティーのかけらもないんですね。もちろんWow war tonightにもカルチャークラブの曲で元ネタがある(from女性週刊誌)のですが、ボーカルが浜ちゃんという拘束のおかげで色々と変更点が出てきてしまう。結果元ネタとは違う曲に仕上がるわけで。これは単にオリジナリティーだけでなくて、元ネタより良い曲を作るには必要な作業なんです。例えば、浜ちゃんが歌いやすいようなカルチャークラブを作ったら、浜ちゃんと同年代の人にも歌いやすい曲に仕上がってしまった。CMタイアップのクライアントのOKが出るような曲を作ったら、そのクライアントと似たようなタイプの人達もその曲を良いと思うような曲に仕上がる。ところが小室さんがプロデューサーでなくミュージシャンとして参加して自分の耳だけを頼りに音を作ると、特定のターゲットとか、特定の顔のみえる個人でなく、すべての人に受け入れられたいと思ってしまう。結果、誰からも拒否されないけど誰からも熱狂されないような無難な音になってしまうんですね。だから、作詞も作曲も編曲も演奏も一人で出来るミュージシャン小室哲哉に必要な外部の手助けがあるとしたら、レコーディング室で発生している音に対して何らかの反応を返せる人でしょう、それはミキサーさんだったり、CMのクライアントさんだったり、ド素人のボーカリストだったりするわけで。
 CMソングを見てても、先に曲があってそれを使ってくれるようなクライアントを探すというタイプになるとダメですね。コーヒーのCMでありますよね、音と映像が全然合ってなくて映像が音に合わせる努力してる奴。「自由」という歌詞に反応して人の背中から羽が生えて窓の外に飛び立つ奴。CMの主役であるコーヒーとどう関係あるのかよく分からない映像・・ああゆーのより、Being=織田哲郎的に商品イメージから商品のメインターゲットからCMに使用されるタレントさんのイメージ(調査元電通or木村総研)からデーターとして受け取った上で、15秒バージョン25秒バージョン30秒バージョンと数種類出して、仕上がりの映像を見てさらに直して、3分半の音を作るのはさらにその後・・・・みたいなのの方が面白かったりね。車のCMとかだとさ、グローブのシンボルマーク自体が車のタイヤみたいだしさ、グローブの割には洋楽っぽい音を外車の映像に載せる辺りも映像と音と商品のイメージが合ってるしカッコ良いんだけどさ。
 ここまでが、小室マジックの中身、これからがその終焉って辺りで。



●TKマジック終焉の真相ってか?

 はじめ、小室がバンドを解散してYOSHIKIとV2やってた頃、小室哲哉は今後十年は音楽の表舞台に立てないって雑誌に書かれてて。その理由ってのは借金で、TM解散直前に買った三千万円のシーケンサー、当時の小室氏の収入では払いきれるかどうか怪しいって額で、さらにレコード会社や音楽出版社やアニメ会社を作ってそこの社長に小室の愛人と言われている女性を添えて会社を通じて月五十万をその女性に払ってるけど、どの会社も開店休業状態だってなことが書かれてたわけ。別れた奥さんへの慰謝料もあるしって事になると、それほど売れていたわけでもないバンドの人間がソロで本当に稼げるの?って話題が今で言う羽賀研二や岸辺シロー、昔だと地獄の黙示録の頃のコッポラみたいに書かれてて、TRFや篠原涼子で稼いでるときも「借金多いと大変だよね」ぐらいにしか私は思わなかったわけで。はじめは何がなんでも金を稼がなきゃいけない状況があってそこから始まった商業的拡大路線が作詞作曲部門印税収入日本一にまでなったと。
 そしてその高収入状態を維持して行く中でエイベックスってのが関わってくるわけですね。小室氏への接待費を使って小室氏の銀座での飲み代から始まり、NYでレコーディングだといえばファーストクラスのチケットからグランドピアノ付きの一流ホテルのスィートルームから移動用のリムジンバスと運転手まで全部手配したと。プライベートでの小室氏の生活費から遊興費から全部面倒みたと・・・・まあ、雑誌には書いてあるわけで。これが出来るのもエイベックスが株式会社じゃないからで、株を店頭公開して株主が別個に発生すれば経営の中身を全部公開せねばならず、そうすると小室氏個人への膨大な接待費は維持できない。・・てなわけらしいんですね。もち、俺はこれを事実だと断言できん、雑誌にそう書いてあった。



●TKの、マジックからリアルへつーこと?

 そのエイベックスが株を店頭公開し、小室哲哉がエイベックスを離れた。極端な高額所得者でしかも扶養家族がない場合、所得税だけで五割プラス住民税やなんやかんやで、収入の九割が税金になるらしい。そういう人には税金のつく一千万より、税金のつかないニ百万の方がありがたかったりするわけで、エイベックスから収入を現金で取引されるより、エイベックス内での小室が自由に使える必要経費枠が増える方が小室にとっておいしいわけです。が、エイベックスの株式会社化と共にそういう税金の隠れミノもなくなってしまった。さらに海外進出しようとしたときに日本での販売実績を表やグラフにして分かりやすくまとめて自分を売り込んだが、思ったほど良い反応はなかった。まあ、個別には色々マイケルジャクソンと仲良くなれたとかあるらしいのですが、日本での販売実績だけではなかなかアメリカの会社は乗ってくれないみたいで・・等の事例から作詞作曲部門印税収入日本一のうまみが小室氏にとって無くなってきてる。この辺がね、冒頭のような悲観的な発言につながっているのではないでしょうか。って、前半コムテツをほめてた割に結構けなしてねぇーかこの文章?しかもネタが噂の真相ノリだし。



●4月1日Letter for TKてな感じ

 以上、今日だから書ける日記でした。



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