甲南湯


(入り口から中は想像しがたかった…)

aqua.gif (191 バイト) 場所 JR西鹿児島駅 徒歩10分

なんと!鹿児島にて営業中の女湯に侵入したぞ!

はるばる来たぜ鹿児島…夜の飛行機で到着、鹿児島は空港から街までが遠いんだよなあ。鹿児島空港に降りたのは何回目だろうか。とりあえず、西鹿児島の温泉付きビジネスホテルを取って、さてまず銭湯行くか。しかしあっしもバカだねー、せっかく温泉ホテルに泊まって、まず銭湯とは…

鹿児島の電話帳で銭湯を調べるときは要注意っす。銭湯で引いても12軒しか出てこない。ほとんどの銭湯は「温泉浴場」で登録してあるっす。何しろ鹿児島の銭湯は天然温泉が当たり前!さて、ホテルから近い銭湯っつー と…

候補に甲南湯と南開温泉の二つが上がるっす。なお、鹿児島の銭湯は早朝からやってるけど、仕舞は22:30っつーパターンが多いので要注意っす。もっとも深夜営業も沢山あるけどね。海南温泉の方は比較的新しい、天然温泉銭湯、こりゃ当分大丈夫だろう。びっくりしたんだが、そのすぐそばに「温泉」っつー商店街のネオンがあるんだが…ネオンは生きてるんだけどねえ…そこはちょうど銭湯的な広さの駐車場。うむ〜、温泉銭湯天国鹿児島でも、確実に廃業が起こっているのか…


(南開温泉)

(ネオンはあるのだが…廃業跡地らしい)
(後注:このスペースは南海温泉の駐車場の模様)

っつー訳でレトロそうな甲南湯の方に向かうっす。通りに行灯の大きな看板が出てるけど、まあ地場の銭湯っすねえ。質素な入り口なんだが、なんか引力を感じる…隣はコインランドリー。なんと玄関に何気なタイル絵。これは期待できるかも。


(何気なくタイル絵、これは期待できそう)

さて、中に入ると当然のように番台。おしどりの古い大きな下足板の鍵。番台で鹿児島県銭湯料金330円を払うっす。脱衣場の天井は低く、古い銭湯。ロッカーの鍵はツルカメ、さらに長方形の籠が置いてあるっす。お釜型のドライヤー椅子、さらに旧式のマッサージ機。脇に居住部分への入り口、なぜかここに焼酎の一升ビンがいくつか置いてあるっす。男女の境にはTV、長いす。すべてがなんっつーか懐かしいような、家庭的な銭湯っす。雑誌が結構雑然と置いてあるっす。金魚の水槽。

浴室へ。これがまた古い銭湯、天井はかなり古めの天井だけど2段になった湯気抜き。桶はケロリンの小型。コイル型のあんまり見ないような椅子。ど真中に丸いかけ湯槽、両サイドにカラン。カランはツルカメの赤青丸型。両側合わせて計9個。シャワーもしっかり付いているっす。シャワー、カラン、ともに適温、湯量は気持ち弱いっす。浴室のタイルが細かい。

カランでヒゲ剃りしようとしたら…なんと!鏡の位置が低い。窓側のカランは椅子に座るとちょうど鏡に向かい合うんだけど、センターのカランはもっと低い位置に鏡があるっす。っつーことは…要するに床にべたっと座るとちょうどいいように鏡が付けてあるっす。なるほど、郷に入れば…っつーことで床にベタ座りでヒゲ剃り。男女の境の上部は、例の地方で見かける向こうが見えない厚ガラス。

で、この銭湯のポイント、それは最奥部上部のタイル絵っす。色合いが綺麗なタイル絵、かなり大きめ。どうも富士山のようなんだが…若干山の形が富士山と違うけど…やっぱりこれは富士山だろうなあ。開門岳でも、ましてや絶対桜島でもなさそうっす。なかなか見事で風情たっぷりっす。まさか鹿児島では実物の富士山は見えないだろうに…

さて浴槽。奥に2槽、天然温泉が当たり前の鹿児島で、ここは温泉ではないようなんだが…でも、なんか硫黄臭がするっす。片方が薬湯で、どうやらここから発している臭いのようっす。見ると真っ白の薬湯。壁には漢方の延寿湯と書いてあるけど、これは多分温泉系の湯の花ではないかなあ。いずれにしても気色良いっす。温度は42〜43度くらいっす。この薬湯槽の奥半分がデンキ風呂になってるんだが…これが強い!?ビリビリくるっす。

さらに手前が白湯槽、1穴のジェットが2機噴出中、これはかなり勢いは弱いっす。で、なんとこの銭湯、一人サイズながら、円形の水風呂もあるんだなあ。冷却してないけど、水風呂を楽しみ再び薬湯へ。

上がりは…ドリンクは特に無し。先に上がってた親父が帰ると、客はあっし一人っす。鹿児島の銭湯は開店が早いが仕舞も早く、だいたい22時半に閉まるっす。朝風呂のところも多いけど、ここは13時から。鹿児島で朝風呂が多いっつーのは、多分源泉が結構熱いから、沸かす必要がないからだろうなあ。

客も居なくなったことだし…意を決して、番台のお姉様に「すみません…」とタイル絵の撮影の許可を求める。「ああ…いいわよ」とOKを貰ったっす。超ラッキー!で、タイル絵を撮影してると、住居部分のドアから白髪の、おそらくこの銭湯の大女将が!番台の交代らしいっす。それまで番台に座ってたお姉様が、「珍しいからって、絵の写真取ってるのよ」と説明。あっしもちょっと緊張だが…

あっしを一瞥した後に、なんとタイル絵の解説を!「あの絵はね、一枚一枚タイルを焼いて作ってるのよ…」ううむ。あっしのことをタイル絵の価値が解る人間と認めてくれたか。「40年くらい前にねえ、6万円だったか…」1960年、昭和35年頃の6万円っつーのは、どのくらいの価値だったんだろうか?良く分からん…が、100万円以上の価値ではあるだろうなあ。「一回火事になったんだけどね、焼けた後、あのタイルだけ残ってた」うむ〜、銭湯に歴史ありだなあ。こっちも「いや〜、東京から来たんだけど、これだけ立派なタイル絵は東京でも珍しくって…」女将は「東京から」のヒトコトにも別に動じない。

そして…耳を疑うヒトコト。「女湯の方がもっと綺麗だから、そっちも撮っていきなよ」え?え?え?いいの!?「今一人入ってるから、出たらいいよ」銭湯マニアなら分かるだろうが、これには嬉しさ余って胸ドキドキ。10分ほど待つ間に、さらに浴室を撮影させてもらうっす。客がいないとはいえ、営業時間内。

そのうちに女湯の客との会話が聞こえる。「今さ、絵の写真撮りたいっていってる、東京から来た人がいるんだけど、もう入れていいかい?」お許しが出て、「あの」男湯と女湯を隔てるドアが空けられる…侵入。むこうには髪を拭いてるお姉様が。「アタシはねえ、小学校の頃からここに来てるのよ」。

女湯のタイル絵は…男湯からは分からなかったが、男湯同様、山の絵。でも…男湯が和風の絵なのに対し、こっちは洋風の山。なんと!全然分からなかったっす。その話を客のお姉様にいうと、「あら、知らなかった」長年来ている客でも、「向こうの世界」は知らない…大女将は「良かったね」と笑って軽くのたまう。いや〜、本当に良かったっす。

っつーわけで感激の体験を胸に、歩いてもさほど遠くはない天文館へ祝杯を一人であげに行くのであった。感謝感激とはこのことだな…鹿児島編。


(天文館にて…こんな暖簾の店があった。
が…その上の階のFUCKって店は何なんだよ!?)

(2002年10月)