(1.1.5)クォーツ式時計


今日もっとも一般的なのが、このクォーツ式時計です。水晶振動子を 用いた発振回路の出力を分周(周波数を落すこと)、時を刻むための信号 として用いるもので、ステップモータを用いたアナログ式、液晶表示装置 などを用いたデジタル式、その複合式など多彩な方式があります。1929年、 ウォレン・マリソンにより開発され、極めて精密な時計としてマリンクロノ メータ、オリンピックの公式時計などに用いられました。クォーツ式腕時計を 最初に実用化したのは我が国のSEIKOで、1969年のクリスマスに、発表と 同時に発売されました。18金のケースを用いていたとはいえ当時の価格は 45万円で、`自動車より高い'と話題になりましたが(当時トヨタ・カローラが 42万円)、すぐに完売したとのことです。この最初のモデルはペットネームを `Quarz-Astron'といい、公称の月差はプラスマイナス3秒以内、発振周波数は 8,192Hz(今日製造されているものは32,768Hz)、ディスクリート(トランジスタや 抵抗などがICになっておらず個別の部品であること)部品を用いて一つ一つ 手作りで組み立てられたものでした。今日では回路の集積化、量産化により 価格も大幅に低下し、安価で正確な時計を求めようとすれば、これ以外に 選択肢はないといえる状態になっています。