(1.3.1)耐震機構


機械式時計が現れて間もない頃、時計を床に落すことはすなわちそれが 壊れることを意味しました。テンプの軸、“テン真”が折れてしまうから です。それなら折れないように太くすればいいかというと、今度は摩擦が 増えてしまいます。据え置のクロックならば振り子に相当する部分の摩擦 が増えてしまっては、精度に著しい影響が出てしまいます。そこで1950年代 頃から装着されはじめたのが耐震機構です。その基本思想は、強度をかせぐ ことができないなら弾性体で衝撃を吸収してしまえばいい、というもので、 テンプ自体にバネの機能を持たせたり、テンプの軸受け部分(通常、“穴石” などといった名称の人造ルビー等が使われていて、耐磨耗性、油の持ちを 稼いでいます)をバネで支えたりするようにしたものです。そういった機構が 採用されはじめた当初、我が国ではCITIZENの`パラショック'があまりに有名 になり、普通名詞化してしまって時計店は説明に苦慮したそうです。今日では 機械式時計で耐震機構を装備していないものはまず見られないといいます。