(1.3.3)防水


機械式であれ、クォーツであれ、メカ(そして電子回路)の弱点といえば水。 ムーブメント内に水が侵入したが最後、時計の機能は大幅に低下し、最悪の場合 機能を停止してしまいます。これを防ぐことができるのが`防水ケース'。 これを初めて現実のものにしたのがROLEXのOYSTER CASEでした (`OYSTER WATCH COMPANEY' の実現した技術を買い取ったともいわれていますが、詳細は不明です)。 時計に水が浸入する経路となり得る場所は、構造のつなぎ目、即ち、ガラスと ケースの間、ケースと裏蓋の間、ケースとリュウズの間、などですが、中でも リュウズに関しては、その可動性と水密性を両立させなければならず、技術的に 最も困難な部分でした。OYSTER CASEは、リュウズをねじ込み式にすることに よってこれを解決しました (1926年に特許取得)。これは、リュウズを反時計 まわりに回転させることによって引き出し、巻き上げ、さらに今度は リュウズを押し込みつつ時計回りに回転させることでリュウズをしっかり ロックすることができる、という画期的なものでした。 国産の防水腕時計が登場したのはそれよりかなり遅く、1949年のことでした。 SEIKO ` ウォータープルーフ ' がその製品ですが、裏蓋がねじ込み式にこそ なっていたものの、そこにパッキンを有さない構造であったため、その 防水能力は低かったようです。本格的な国産防水腕時計の登場には、 それからさらに10年後、1959年まで待たなければなりませんでした。CITIZEN ` パラウォーター ' は、` フレンドシップくろしお63号 ' 実験の成功により その名を高めました。これは、腕時計を水中に露出させた状態でブイに組み込み、 太平洋を横断させるというものでした (一見機雷と間違えそうな形をしていた ため、蓋に ` NO DANGER! ' と大きく赤で記されていたのがご愛敬です(笑))。 その後、 国産腕時計メーカー各社による防水時計合戦が勃発しました。 しかし、過熱するカタログスペック競争に、実際の技術力が伴って いなかったために浸水事故が続出、結局ブームは数年で去ったのでした (最近もよく聞くような話ですね(笑))。 現在では素材技術、金属加工精度の飛躍的な向上により、数百メートル オーダーの防水腕時計が安価に量産できるようになりました。今日主流 であるクォーツ腕時計では、リュウズによる巻き上げ機構が不要のため、 リュウズが押し込まれた状態で回転できなくても問題なく、そのため 10気圧防水程度の機能ならばねじ込み式にせずとも実現可能となっています。