済んだ鐘の音で時を知らせるミニッツリピーター。その機能は17世紀後半、
暗いところで時刻を知るためのメカニズムとして誕生しました。今日では
電灯も普及し、時計本体に電球やLED、ELパネルなどによる照明を組み込む
ことも容易ですが、当時は音を利用するのがもっとも現実的な解決策でした。
動作は以下のようなものです。`時打ち作動レバー'を操作することにより、
例えば3時48分ならば低音の鐘が3つ(3時)、低音と高音の連打が3つ(15分*3)、
高音が3つ(+3分)という具合にハンマーが2つのゴングを叩きます(高音と低音は
逆のものもあります)。その原理は、その時々の時刻を、`時'、`クォーター
'(15分単位)、(剰余の)`分'の3つの要素に分けて、各々専用の歯車式カウンター
で数えておき、数えた数に応じてハンマーを作動させるといったものです。
同系統の機能として、クォーターまでを知らせる`クォーターリピーター'、
`時'のみを知らせる`アワーリピーター'などもあります。今日でもこの機能
を有する時計は製造され続け、ついには腕時計にも組み込まれるようになり
ました(元々は懐中時計の機能でした)。また一方でその、`暗いところで時を
知る'という目的は、前述のように時計に照明機能を内蔵させたり、さらには
合成音声で時を知らせるような機能へと発展していきました。
参考までに:ミニッツリピーター、ことにその機能を有する腕時計は極めて
高価なものですが、我が国のCITIZENからはマイコン制御によりその機能を
摸した製品が発売されています。
時計はとてもデリケートな機械です。そして純電子式のデジタル時計を除く
多くの時計は数多くの可動部分をもち、その可動性が精度と密接に関係して
います。もしそれらのパーツが磁化するようなことがあれば、相互に吸引力や
反発力を生じて大きな狂いを発生させてしまいます。よって、時計はダイナ
ミックスピーカーなどの磁石を利用した製品のそばには置かないことが重要
なのですが、近代的な暮らしの中において磁場を完全に排除するのは実際には
かなり困難です。そこで、多少の磁場では磁化されないような機構をもつ時計
が作られるようになりました。これが耐磁時計です。耐磁のアプローチは主と
して2つ。一つはパーツに極力非磁性体を使う方法で、もう一つは磁気シールド
を用意する方法です。前者のアプローチは多くの耐磁時計に採用されています。
磁気シールドには軟鉄板が用いられるので、重くなるのが難点です。強力な
磁気シールドを有するROLEX MILGAUSSは、1000Oe(エルステッド)の磁界に耐える
時計として有名ですが、現在は残念ながら製造が中止されており、実用性よりも
その希少性により価格が上昇しています。なお、我が国では近年、JISにより
耐磁の基準が規定されました。