記事一覧

ブライトリング AVI Ref.765 1953リ・エディションを1週間レビュー

再始動した素晴らしい50年代のパイロットウォッチが未来を照らす。

ノスタルジアは、私たちが過去を振り返る際に強い影響力をもつ‐歪められ、理想化された記憶のみが残る。

图片描述

この時計を見ると、50年代へのノスタルジーを感じないだろうか?

それを理解することは、歴史的なデザインにインスパイアされた現代の時計をどのように分析するかの糧となる。歴史的なリファレンスのオリジナルモデルを評価する際には、必ずしもデザインの詳細を評価するのではない。その時計が生まれた時代背景を評価するのだ。例えば、ロレックスのポール・ニューマン デイトナ。ダイヤルの視認性は酷く、ヴィンテージウォッチとしての作りは、現代の時計と比べてもそこそこといった程度だ。それでも、記録的な値を付けて以来、おそらく最も追い求められているヴィンテージウォッチだ。それは“キング・オブ・クール(訳注:P.ニューマンを指す)”がこの時計を作ったからだ。私たちは往々にして、時計そのものではなく背後にあるストーリーを買ってしまうものだ。しかし、それは悪いことではない。時計にまつわるストーリーの方が、時計そのものよりもはるかに面白いことが多いのだから。

图片描述

この現象は、過去のデザインを再解釈して新しい時計を作る際に、メーカーに大きな裁量を与えることになる。そして、その物語性やノスタルジアに囚われ冷静さを失うと、疑問符のつくデザインでも許してしまいがちになる。

 実は、今回紹介するブライトリングAVI Ref. 765 1953 リ・エディションが面白いのは、そこなのだ。50年代の時代背景を抜きにしても、時計そのものがとてもよい。この時計を押しつけるために歴史を利用しているわけではなく、デザインを再解釈する際に、現代性を手抜きするための言い訳として使ってもいない。この時計は、ブライトリングが商業的に通用するリファレンスとして生産する、理論上1953年発売のオリジナルモデルに限りなく近い時計である。

ブームの始まり

今日のブライトリングは、昔のブライトリングとは全く違うということを理解しておく必要がある。同社は1884年の創業以降、その歴史は平坦なものではなかった:1979年のクォーツ危機によってブランドが消滅し、突然歴史が途切れてしまったのだ。社長のウィリー・ブライトリング自身も同年に亡くなっている。1982年にアーネスト・シュナイダーが再スタートを切ったが、それまでとは少し違った角度からのアプローチで、現在では "ネオ・ヴィンテージ "と呼ばれるデザインの数々を発表した。

1940年代のブライトリングは、クロノグラフのトップメーカーのひとつだった。例えば膨大な数のリファレンスの数々だ。リファレンスごとに新しい技術やイノベーションが盛り込まれている。時計と並行して、ブライトリングのユイット アビエーション部門では、ヨーロッパの主要な航空メーカーに供給する計器を製造していた。50年代に入ると、デザインはさらに洗練され、道具としての魅力を増していった。軍事用ジェットエンジンを搭載した航空機が普及したことで、精密さ、正確さ及び信頼性を備えた時計が求められるようになったのだ。数多くの特許を持ち、数十年に渡ってクロノグラフを製造してきたブライトリングは、その10年前に発売されたクロノマットに加え、プレミエやスタイリッシュなスーパーオーシャンが登場するなど、常に時代の先端を走っていた。

AVI Ref. 765は1953年に発売され、今作の復刻版の名が示すように、ジェット機黎明期のニーズに応えた特殊な機能を備えていた。3時位置にある15分積算計は、航空機を安全に運航するために必要なウォームアップ手順と飛行前のチェックの時間を計るためのものだ。当時は、アメリカのF-86セイバーやイギリスのホーカー・ハンターなどのジェット戦闘機の時代だった。これらのジェット戦闘機は複雑で、当時としてはまさに最先端のものだった。AVI Ref. 765も同様だ。搭載されたムーブメントCal.ヴィーナス178は、標準仕様は30分積算計だが、AVI 765では15分積算計に改造された。また、ダイヤルの視認性を高めるため、当時としては巨大な41mm径のケースを採用した。このモデルは53年から60年代初頭まで製造され、その後、少しずつ異なるAVI Ref.765に置き換えられていった。ルイ・ウェストファレンが2016年にそのうちの1モデルのハンズオン記事をリリースしているのでご覧いただきたい。

图片描述

AVI Ref. 765は、1950年代のブライトリングを象徴するモデルだ。アメリカやヨーロッパの地上では好景気が続き、空には超音速のブームが到来していたため、ブライトリングは航空時計に応用できる機能の基準を確立した。そして、2020年のブライトリングはそのことを忘れていなかった。

関連ブログ:見栄えが良く、トレンディなものは常に最も美しいあなたに属します