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【まるでアンティークの佇まい】1960年代の雰囲気を醸す、“アクアスター”に注目

アシンメトリーなデザインが目を引く、60年代の名作ダイバーズウオッチ

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創業者のフレデリック・ロバートは、ジャンリシャールのオーナーであるジャン・ロベルトの息子であり、時計職人であり、さらにダイバー、セーラー、パイロット、数学者、と多彩な才能を持っていた。

 彼は父のブランドで働いていくなかで、ダイバーや水中活動のためのプロフェッショナルな時計を作ることを志す。1962年にはブランド名を”ジャンリシャール”から”アクアスター”へ変更。”アクアスター”は、ダイバーズウォッチの製造が活発化した60年代に革新的なダイバーズウオッチを次々と発表していった。

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代表作である”アクアスター ディープスター”は、特許取得したマルチプル・ダイブ・デコンプレッション・ベゼルやフリクション、ベゼル・リングなどの革新的技術が搭載された。

 マルチプル・ダイブ・デコンプレッション・ベゼルはベルギーのダイバーであり科学者でもある、マーク・ジャシンスキーがデザインしたもので、スチール製のリングに刻まれたデュアルスケールのベゼルだ。このベゼルはダイビングの経過時間を記録するだけでなく、ダイビング中での浮上時間や次のダイビングの減圧時間を推定することができた。

 当初、”アクアスター”はプロフェッショナル向けの時計で、ダイビング専門店でしか購入することができなかったため、当時のダイバーはアクアスターの時計を秘密にしていたようだ。

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その後も、ディープスター、アクアスターをベースに後継機種のダイバーズウオッチが次々と発売されるが、クオーツ危機により、”アクアスター”ブランドで革新的な時計を開発し続けることが困難となり、フレデリック・ロバートは1974年に引退を決意する。

 ”アクアスター”は、ジュネーブに本拠を置くエレン・グループに買収され、新しい製品開発戦略を導入。主流のダイバーズウオッチやスポーツウオッチなど、幅広いモデルを製造して一般向けに販路を切り拓き、さらに1982年にセイネット兄弟に売却される。

 熱心な船乗りで、3代目の時計職人でもあるマーク・セイネットは、アクアスターを新しい方向に導き、若い人たちにアピールする必要があると考えた。機械式から手頃なクォーツへと移行し、この大胆な方向転換により1983年から2018年までアクアスターは商業的成功を収め、”アクアスター=クォーツ”というイメージが定着する。

 2019年、セイネットは”アクアスター”ブランドをザイクロン・グループに売却する。アクアスターの在庫、工具、スペアパーツ、設計図、関連文書などの権利を取得し、1960年代に発売されたオリジナルの「アクアスター・ディープスター」を再現、20年に本格機械式時計として”アクアスター”を再スタートさせる。

 現在ではスポーツウオッチの定番となったダイバーズウオッチ。様々な時計ブランドがダイバーズウォッチを発表しているが、どれも似たようなモデルであることが多い。そんななかで、1960年代に最も影響力を持っていたダイバーズウォッチのデザインや仕様、技術的特徴を忠実に再現した”アクアスター”は、ありふれた時計とは一線を画し、独特の存在感を発揮している。半世紀を経たことで、レトロなデザインは逆に新鮮な印象を感じさせ、しかも流行に左右されないタイムレスな魅力も兼ね備えている。


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