入管・難民法改正に向けたフォーラム

インドシナ難民の定住支援を条約難民にも広げることは閣議了解
〜60日条項の改正、難民申請者への法的地位付与については先延ばし:法務省に巻き返しの余地残す〜



 
 

 下の記事にもあるように、8月7日、政府は1979年のインドシナ難民受け入れの閣議決定以降実施してきたインドシナ難民への定住支援を条約難民にも広げることを閣議了解しました。これは、新たに定住するインドシナ難民の数が少なくなってきたことへの対応策ともいえ、自民党の提言の中にも含まれていたものです。
 しかし、一方で同様に自民党提言の中に含まれていた、現行入管法の60日条項の延長(180日にする)や、保護施設への入居を条件に在留資格のない難民申請者に一時的な在留資格を付与する内容については、現在進んでいる法務大臣の懇談会の提言待ちになってしまいました。法務省内の守旧派のロビー活動などによって、自民党内でも議員の間で意見の対立があるとされており、法務省内守旧派の巻き返しの余地を与えることになってしまったのは残念です。
 難民条約に準拠した難民の受け入れを目指す市民社会の立場からは、政府・自民党内での議論の動向に注意を払うとともに、より積極的な政府・議会への働きかけが重要になってきます。


共同通信8月7日

条約難民の定住支援決定  政府の連絡会議が初会合

 政府は七日午後、これまでベトナム、ラオス、カンボジアからのインドシナ難民に限定してきた定住支援措置を、入管難民法で認定された「条約難民」にも適用することを閣議了解し、同時に新設を決めた「難民対策連絡調整会議」(議長・古川貞二郎官房副長官)の初会合を首相官邸で開いた。
 初会合では、これまでインドシナ難民を対象としてきた「国際救援センター」(東京)への入所を条約難民にも認め、来年度から年間二十人程度を対象に約四カ月間の日本語教育や職業訓練、職業相談などを実施することを決めた。
 中国・瀋陽の亡命者連行事件を機に、日本の難民政策が非難されたことを受けた対応。同調整会議は既存の「インドシナ難民対策連絡調整会議」を改組した。
 ただ(1)入国から原則六十日以内しか難民申請を認めない「六十日ルール」(2)難民認定申請者の法的地位―など難民認定制度にかかわる諸問題は、森山真弓法相の私的懇談会の審議を見守る方針。
 初会合では、国際救援センターに入所した条約難民への生活費(一日九百五十円)や定住手当(一時金約十六万円)の支給、定住後のアフターケアを行う「難民相談員」の配置も決めた。
 またインドシナ難民の受け入れ事業は数年後には終了する見込みのため、同センターの再整備や代替施設の建設なども検討していくことを決めた。

内外世論受け一定の前進  条約難民の支援拡充で

 政府が七日に新設した「難民対策連絡調整会議」でインドシナ難民に限定していた定住支援措置を入管難民法で認定された「条約難民」にも拡大することを決めたのは、待遇の格差是正を求めた国連人種差別撤廃委員会の勧告に加え、中国・瀋陽の亡命者連行事件を契機に高まった難民政策への関心に対応する必要に迫られた結果だと言える。
 自民党も事件後、麻生太郎政調会長の下に、中山太郎元外相を座長とする特命のプロジェクトチームを設置し、七月末に条約難民への定住促進支援の実施を提言をまとめており、内外の世論に後押しされてようやく重い腰をあげた格好だ。
 今回の見直しで、条約難民は従来受けられなかった日本語教育や職業訓練などの支援を受けることができるようになり、人道的な見地から一歩前進したのは間違いない。
 しかし自民党提言にも盛り込まれ、より根本的な問題として横たわる難民認定申請者の法的地位や不服申し立て制度の見直し、入国から原則六十日以内しか難民申請を認めない現行ルールの改善などは課題として積み残されたまま。
 特定非営利活動法人、難民支援協会の筒井志保事務局長は「難民認定制度が始まって二十年間、一度も動かなかったものが動き、大きな前進だと思うが、これで終わってはいけない。今後、難民申請者の保護措置を含め総合的な取り組みが必要だ」と話している。
 国連人種差別撤廃委員会は昨年三月「インドシナ難民は住居、財政的支援があるのに対し、他の難民に適用されていない。すべての難民が等しい給付資格を確保するための必要な措置をとることを勧告する」との最終見解をまとめ、日本政府に改善を求めていた。

 
 

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