ゴールデンウィーク中は今年も3、4日に静岡で一泊。 毎年恒例 [去年の鑑賞メモ]、『SHIZUOKAせかい演劇祭2026』と『ストレンジシード静岡2026』。 3日は昼に静岡芸術劇場で Baro d'evel: Qui som? を観た後、ホテルに荷物を置いて、こちらへ。
『ストレンジシード静岡』はすっかり常連の 鈴木 ユキオ、 今年はイギリス拠点のインクルーシブダンスカンパニー Stopgap とのコラボレーションということで期待していましたが、 開場の17時頃は小雨がぱらつき初めてしまいました。この後、雨は強くなる予報ということで雨天中止になってしまいました。 障害のあるダンサーが出演する演目ですし、その後の降りっぷりからして、雨天中止は適切な判断でした。
気持ちを切り替えて、他はまだ観れるかもしれないと、駿府城公園へ移動。
瀬戸内サーカスファクトリーのアソシエイト・アーティストの 谷口 界, 野瀬山 瑞希 の Cyr wheel と、
麻風 の大旗遣いを組み合わせた、コンテンポラリーサーカス作品です。
谷口 は ホワイトアスパラガス [鑑賞メモ] などで観たことがありましたが、他は初めてです。
駿府城公園内の広場の一角に10 m 四方程のステージを作りそこで上演しましたが、20 m × 50 m 余はある広場全体を借景していました。 広場一面に薄く敷かれた白っぽい細かい砂利の上に、ステージが掃き分けられ、庵治石と呼ばれる香川県産の花崗岩の自然な形を活かした石材が3つに、鈍く銀色に光る金属製の Cyr Wheel が寝かせ掛けられている様は、 もの派—というか 李 禹煥—のインスタレーションのよう [関連する鑑賞メモ]。 生成りのシンプルな衣装の2人が静かに Cyr wheel をまわしはじめることで、イメージを損なうことなく、これに動きを加えます。 さらに生成りの衣装に純白な大旗がこれに加わり、縦方向の動きや、背景の借景との繋がりが生まれます。 もの派的なインスタレーションが動き出し、さらに、大旗に誘われて空間へ広がっていくかのような、そんな面白さのあるパフォーマンスでした。 惜しむらくは次第に強くなる雨の中のパフォーマンスで、演じる方もやりづらかったでしょうし、観る方も借景を楽しめるようなコンディションでは無かったことでしょうか。
この後、日没後には土砂降りに。そんな駿府城公園で、 『SHIZUOKAせかい演劇祭2026』のSPAC-静岡県舞台芸術センター / 宮城 聰『王女メデイア』を観たのでした。
翌4日はうって変わって天気も良く暑すぎもなく、野外パフォーマンス日和に。まずは駿府城公園へ。
主に首都圏で活動するカンパニーによるパフォーマンスです。このカンパニーを観るのは初めてです。
演技する人をみるというより、芝生に横になり空を見上げながら、アコースティックギターの疎な爪弾きを伴奏にした語りを聴くというものでした。
語りの内容が入ってきたという程ではありませんでしたが、30分の空の移ろいが自然と楽しめました。
駿府城公園を出て、呉服町商店街へ移動。
2025年の 演劇ユニットせのび 『ト(゛)リップ〜七ぶら編〜』 [鑑賞メモ] に続いて、
街の歴史に取材して制作した移動型パフォーマンスということで、楽しみにしていました。
呉服町商店街の老舗や先進的な取り組みをしてみる店の逸話を、
ジンタらムータ演奏のチンドンに乗せて語っていきます。
日本近代戦前期の広告手法に由来するチンドンというフォーマットとと街固有のテーマの組み合わせは、こうしてみるといかにも相性良いのですが、そうかその手があったかという新鮮さもありました。
再び、駿府城公園に戻って。
ひびのこづえプロジェクト ダンスパフォーマンス
同時期に東京芸術劇場で開催されているFACT/FESTIVALの常連だった ひびのこづえプロジェクト ダンスパフォーマンス ですが [鑑賞メモ]、今年はストレンジシード静岡に登場。
NHK Eテレ『にほんごであそぼ』の今年3月末からのエンディング「ねぇ、アリス」の歌と二人のダンサーで演じられる Cheshire cat も登場しましたが、その拡大版というか完全版。
Lewis Carroll: Alice's Adventure in Wonderland に着想した ひびのこずえ らしい衣装が、ポップに踊ります。
天気の良い緑の舞台も(気狂い)お茶会向けだったでしょうか。
そういえば2023年もここでお茶会だった (サファリ・P『おちゃのじかん』) ことを思い出しました。
再び呉服町商店街の札の辻へ移動。
フランスのコンテンポラリーサーカスのカンパニーによる、移動型のパフォーマンスです。
黒シャツに黒スーツという姿の5人のパフォーマーと、
アクロバット的な身のこなしを時折交えつつも、白いクラブのジャグリングをしながら街中を移動するパフォーマンスです。
同じ姿でスピーカーを担ぐミュージシャン1人が、マイクでマウスパーカッションで音楽を繰り出します。
淡々と静かに移動してジャグリングするのではなく、即興的に、横断歩道に寝そべったり、壁や石垣の上に立ったり、階段に座ったり、公園の植栽の中を抜けたり。
日常ではあり得ない場所でジャグリングをすることで視線を誘導して、空間を異化していきます。
ラストは富士見ひろばに出て、ミュージシャンもエレクトリック・ギターでノイジーなリフを演奏し、フィナーレでした。
服装がカラフルではなく黒づくめと対称的ですし、
カラフルな身体もしくは白いクラブのジャグリングという違いはあるもののミニマリスティックな道具立てを使い、
視線の誘導で都市の味方を変えていくようなパフォーマンスという点で、
Cie Willie Dorner: Bodies in Urban Spaces [鑑賞メモ] のジャグリンク版を観るようにも感じました。
大熊 隆太郎
関西を拠点に活動するカンパニー 壱劇屋 を主宰する 大熊 隆太郎 による
マイム、ジャグリング、演劇に音楽とマルチディシプリナリーかつ観客参加型の祝祭パフォーマンスです。
去年も常磐公園で上演していますが時間が合わずに見逃し。
今年は会場が変わり、バージョンを変えての上演とのことでした。
観客にも鳴物を持たせて叩かせるというところまでは予想していましたが、 お祭り的に盛り上がる程度のものではなく、意外にもトランス的な儀式に近いものでした。 基本的にはそれぞれのパフォーマーが自分の得意とするスキルでパフォーマンスするのですが、 石水 タヰキ だけでなくトリコ・Pの 佐々木 ヤス子 が三つ玉のジャグリングやディアボロを演ったところに、思わず目が行きました。
自分もポリバケツを叩く人になってしまいました。ので、後半の観客参加になてってからの写真はありません。
黒袖のダミーハンドを使った四腕でのジャグリングを得意技とするONと、ダンサー・振付家 杉本 音音 の、2人からなるユニットです。
前の演目と時間が被ったので観たのは後半のみでしたが、ジャグリングの要素はほぼ無く、
2人の身体にさらにダミーハンドを加えて、異形の身体を作るよう。
タイトルからして Frantz Kafka: Die Verwandlung 『変身』に着想しているようですが、
虫というより、むしろ、Hans Bellmer の Die Puppe 『人形』シリーズを想起しました。
三度、呉服町商店街へ移動して、少しカフェで休憩。で、青葉シンボルロードで最後にこれを観ました。
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『ストレンジシード静岡』では、『まちなかサバイバル!』 (2024)、『まちなかサバ?リバイバル!』 (2025) と
白いモコモコを着てのウォーキングアクトを交えたエアリアルのパフォーマンスをした関西のエアリアルカンパニーですが、今年は新作です。
誘蛾灯に着想した三角に下げたスクリーン様シルクにビデオプロジェクションしながらの、エアリアルのソロです。 糊むらか付いた埃かの様なムラのある白色光の投影の中でのパフォーマンスは誘蛾灯に囚われもがく虫を想起させますが、 やがてナレーションと共にグロテスクな映像が投影され、囚われもがく虫は映像に囚われた人の願望、欲望のメタファーに変容します。 しかし、エアリアルのパフォーマンスに合ったトーンとしてはこの映像使いで良いと思いつつも、 実際のインターネットのソーシャルメディアに溢れる人の願望、欲望を煽るような映像はインパクト重視でもっとキッチュだよな、とも思ってしまいました。
2016年に始まった『ストレンジシード静岡』も最初の頃はエントリーも雑多な緩いイベントと感じましたが [鑑賞メモ]、 回を重ねる毎に成熟し [鑑賞メモ]、 コロナ禍明け以降のこの数年はプログラム的にも安定して、良いフェスティバルになりました。 2024年から3年間の SPAC-静岡県舞台芸術センターのストリートシアター グローバル人材育成プロジェクト “STRANGE Lab.” という人材育成プロジェクトも始まり、 育成アーティスト4組 (鈴木 ユキオ, 大熊 隆太郎, 安本 亜佐美, ゼロコ) の作品も上演されました。 今後のさらなるレベルアップを期待します。