この5月に静岡芸術劇場で素晴らしい作品 Qui som? を見せてくれたフランスのコンテンポラリーサーカスカンパニー Baro d’evel の[鑑賞メモ] の作品が ARTE Concert で配信されています。 カンパニー主宰の Camille Decourtye と Blaï Mateu Trias の二人にムナジロカラスの Gus を加えてのアクロバット、クラウン、動物使いのスキルを使ったコンテンポラリーサーカスもしくはフィジカルなコメディというだけでなく、 2人のクラシカルな歌のスキルも生かした生演奏の伴奏付き音楽劇、Trias の背中やマイクやマイクスタンドなど意外な所に塗料を仕込んでの音楽に合わせてのライブペインティング、など、いろんな要素を盛り込みつつ、どれとも言い難いマルチディシプリナリな作品でした。
しかし、そんな様々な要素を取り込みつつ雑多な感じではなく、むしろミニマリスティックで余白を生かしたビジュアルと演出で、哀しみや不安の中のささやかな笑いを余韻を含めて感じさせる、詩的な作品です。 男女のすれ違いのようなテーマは感じられましたが、明確なストーリーは無く、スケッチ的な場面を繋いでいきます。 セリフはフランス語で、字幕もドイツ語しか表示できず、セリフの内容はほとんどわかりませんでしたが、演技だけでも雰囲気を楽しめました。 リアリズム的な演技とサーカスやダンス、マイムのスキルをベースとした象徴的な動きを行き来するところは、シュールというかマジックリアリズム的に感じられました。
しかし、ムナジロカラスの Gus が良い演技をしてました。 オープニングで壁を破ってマイクスタンドを手に登場した Blaï がマイクを前に手にしたカンペを嘴てつまみ取ってビリビリにちぎる所から、掴みは完璧。 中盤には Blaï の歌う “Dido's Lament” (aka “Remember Me” from Henry Purcell: Lido & Aeneas) に合わせて Camille と Gus がいわゆるドッグダンスのように踊る場面も素晴らしい。 これだけでも観た価値ありました。