PC処世術>>雑感>>

PC処世術 - 雑感:ライブドアのニッポン放送株取得と放送業界


 近頃、驚かされるニュースが多い。今度は“フジテレビがTOB(公開買付)中のニッポン放送株をライブドアが35%取得。”というニュースが世間を騒がせている。なんでも、フジテレビの筆頭株主がニッポン放送だという資本のねじれにつけ入るカタチで「テレビとラジオ」という既存メディアと提携するのが目的なのだと言う。
 このような資本のねじれを今日まで放置していたフジテレビの間抜けさや、フジテレビとライブドアの間で繰り広げられる株式取得の綱引き問題は置いておくとして、インターネット企業が既存メディアに食い込もうとする動きは筆者にとって非常に興味深い。
 ライブドアは、そういえば昨年もネット企業の球界参入に先鞭をつけ、他のネット企業も追随した経緯がある。この現象は、野球中継というコンテンツの既存メディアからの争奪の一ステップであったと思う。こうしたところに着眼し、世間の耳目を集めながら大胆に行動する同社の戦略は実に鋭いと思う。

 そういえば筆者は以前、サイトに広告を貼り付ける際にこちら「コンピュータの 64bit 時代の到来と共に、IT業界とテレビ業界との戦いも、あるいは見られるのではないか」と書いた。当サイトでも何度か書いたことがあるように、現行のテレビは2011年で放送が中止されることになっており、その日に向けてネット企業が動くタイミングとして2005年というのは時機を得ているかもしれない。
 おそらく、これから数年の間に浸透するであろう 64bitコンピュータの能力のターゲットとして、HD-TVコンテンツの受信・配信・記録は最有力候補の一つだろう。そして、その受信装置は既存のものから置き換えられる予定になっており、その過程が一筋縄で行くとは考えにくい。ましてや、旧態依然の規制産業たる放送業界は、今回のフジテレビの一件からも分かるように,この点についてかなり甘く見ているように思われる。
 現在極めて高い普及率を誇って広告媒体としても横綱級である「テレビ」に、コンピュータ関連業界全体が食指を動かすのは自然の成り行きだ。今回のライブドアの行動も、この流れに沿ったものだろう。

 さて、テレビもそうだがインターネットなどのメディアでは、先に事業を始めた者が強い傾向がある。テレビには後から参入することは殆ど不可能だし、インターネットにおいても有力ポータルサイトを越えるポータルを作ることは難しい。
 例えば,当サイトが「Yahoo!カテゴリ」に登録された直後には、他のポータルサイトが保有するディレクトリからの登録が相次いだ。要するに、他のポータルは Yahoo!の新着をパクって参考にして登録サイトを増やしている実態があり、つまり後追い・模倣方式である。くだんのラ社も例外ではないし、サイトのデザイン一つ見ても後追いの様子が見て取れるというものだ。
 だが、そうしたディレクトリからのトラフィックは殆どゼロであり、草の根検索サイトといい勝負である。つまりこの世界で“後発”というのは、その集客力と知名度において比較にならない程のハンデを背負うということだ。

 そういうわけでライブドアのこの一件は、「ネット業界 vs 放送業界」の構図の“のろし”として意義深いものだったと思う。この構図の中で“先発者”の地位を獲得する企業は、PCが本格的な 64bit時代を迎えてTVもデジタル化への流れを加速する 2008年頃までに食い込めた企業になることだろう。
 もちろん、その中でライブドアが2008年まで生き残れるかは筆者にも分からない。おそらく、他のネット企業の旗揚げもあるだろうし、メディア・コングロマリットの誕生もあるいはあるかもしれない。そのカギは、勿論提供するサービスの良し悪しにかかっている。ラ社は経営戦略を除けば、これまでに後追い・模倣のサービスやスパムメール配信業務などに精を出してきたわけだが、今回の株取得戦略のような鋭さと新しさをサービス面でも提供できるようであれば、先駆者としての地位を固めることができると思う(株取得&提携戦略が成功したとして)。
 それにしても、今回の一件におけるフジテレビの対応は,個人的には放送業界の旧態依然たる業態度量の狭さを世間に曝け出してしまったように思う。(12. Feb, 2005)

[追記] ここ数日、TVでラ社の社長を見かけることが多かった。どうやら、多数の局で弁解に奔走しているようだ。争点は提携後のビジョンであると思うのだが、返って来る答えは“最悪の場合でも…(中略)…損しない”とか“株主…議決権…云々”という話が主なものであるようだ。旧態依然の放送業界に面白い策で切り込んでみたラ社であったが、残念ながら提供されるサービス面のビジョンについては何も具体案はないようだ。やはり模倣参考にすべき先行が要るのだろうか。株式取得の綱引き問題には興味無かったが、その後に残るものについても,今回のラ社の件よりは今後の他社の放送業界への切り込み方がどう来るかの方が楽しみだ。(16. Feb,2005)

雑感へ

PC処世術トップページへ