PC処世術>>雑感>>

PC処世術 - 雑感:パソコン故障で考える“PC蘇生術”の可能性


 つい先日、筆者が愛用していたモバイルPCが故障・昇天した。もともとジャンクで入手してきたものであった上に,かなり厳しい環境(温度差,振動,粉塵,etc)下に曝されてきたことなどを勘案すると、「機械的寿命」を迎えたと考えても差し支えなさそうだ。
 パソコンの故障というのは、そうレアなものでもない。世間でも「パソコンが動かなくなった」というケースは頻発しているらしく、「どうやったら直るのでしょうか」という類の悲痛な叫びもよく目にするところだ。
 筆者自身も「寿命だ」と諦めながらなお,「蘇生の可能性はないものか」とか「どうやったら復活させられるか」などと考えてしまうのだから、“修理”が頭をよぎるのは人情というものなのだろう。

M/B交換を待つPC  だが、実際に“PC蘇生術”を考えるにあたっては、「パソコンが全く動かなくなりました」という程度の,“正常(True)/異常(False)”の僅か 1bit の情報では情報量が絶対的に足りない。先ずは故障の原因に当たりをつけることが蘇生術への道というものだ(実際に蘇生可能かどうかは別として)。
 そのための第一歩は、“PCの死に様”をよく観察して情報を充分に収集・整理することだろう。折角(?)筆者のPCが故障したので,これを例にとって「PC蘇生術」の可能性を探ってみることにしたい。

 筆者のノートPCが動作を停止したのは、PCを片手に持ちながら動画の再生し、その様子を周囲の人に見せている最中のことだった。動いていた画面が止まり、キーボード類からの入力を一切受け付けず、もちろんマウスカーソルも動かない,いわゆる「ハングアップ」という状態となった。当然、制御をPCに移している電源ボタンも効かなくなっているので,ACアダプタとバッテリを抜いて電源を切る事になる。
 この時、筆者の前ではこれまで一度たりともハングアップした事の無かったPCだっただけに、動作が止まった時には寿命の訪れを直感した(つまり、ソフトウェア的な問題ではない、ということ)。上記はまさしく「PCの死に際」だったのだが、この死に際には故障を類推する上で重要なヒントが隠されている。
 まず、電源が死んだのではない、ということが分かる。そして、画面表示が継続されているところからすると、液晶モニタも生きている。また、動画が止まった状態とはいえ、ビデオメモリ上のデータは正しく画面に反映され続けているようなので、VGA系のトラブルの可能性は低そうだということなどがわかる。また、一応臭いもかいでみると,何かが焦げたのではないことが分かる。
 このように、“死に際”の様子には相当の情報量がある。その情報を正しく吸い上げるには、パソコンを構成するパーツとその動作をある程度の理解しておくことが必要かもしれない。

 続いて、PCの“死に顔”を拝む事になる。つまり、電源を再投入して臨終を確認するということだ。筆者は先ほどのハングアップの原因として,楽観的には熱暴走,悲観的にはハード故障を疑っていたのだが、電源再投入によっても起動しないところからして、単なる熱暴走の類では無かったことが分かる。
 ここでも、「起動しなかった」という僅か 1bit の情報しか得られないようではPC蘇生の道は遠い。そこで電源の再投入時には、パソコンの起動シーケンスに照らしながら何処が故障したのかを推定する事になる。x86系CPUを搭載したPCの場合、起動時のCPUは8086相当なのであり、メモリのFFFF:0000番地(ちょうど1Mbyte目近辺)に書かれている命令から実行を開始する。通常はこの辺りに BIOS のアドレスが書かれており、そこへジャンプしてBIOS上のプログラムが実行されてゆく。
 PC/AT 機の詳細は全然知らないが、起動時の挙動をつぶさに見ると,本体のBIOSは真っ先に VGAアダプタ上のBIOSを呼ぶようだ。ここで初めてモニタへの出力がONになるわけで、したがって起動した最初の画面にはビデオカードの表示がある。続いてメモリチェック,接続されているHDDの認識へと移り、最後にHDDのブートセクタをメモリにロードしてそこにジャンプする。もはやここまで来てしまえば、その先はハードの故障というよりはソフトの問題という可能性が濃厚になるというわけだ。このように、ブートシーケンスの何処で引っ掛かるかは故障診断上極めて重要な情報だ。

 さて、筆者の故障したPCを観察してみると、電源を投入するとHDDの回転は始まる(つまり電源は入る)が、液晶モニタがONにならない。モニタ自体は“死に際”で生きていた事を考えると、どうやらBIOSが真面目に実行されていないらしく、ビデオカード上のBIOSすら実行できていないということのようだ。
 とすると原因は,CPUまたはマザーボードの故障ということになる。メモリの故障(最初の1MBが壊れる)というのも可能性はゼロではないが、いずれにしてもマザーボードに直付けなので,対策としてはこれを交換する以外に道はなさそうである。振動下に置かれることも多かったPCなので、ハンダの接合部などがどこかで破断したのかも知れない。CPUやチップセットに用いられる BGA のハンダバンプなどはとても手作業で確認・修理するなどは筆者には無理そうなので、修理するとすればマザーボードの交換ということになるわけだ。(なお、分解してみたが,焦げなどの外傷は見当たらなかった)

 幸いにして,筆者の所有していたノートPCはベンダによるディスクロージャが進んでおり、分解組み立て方法までが掲載された純正保守マニュアル一式をネットで入手できる事などが効いているのか、マザーボードなどの各種分解パーツも中古市場で多く出回っているようだ。そういうわけで、早速約5千円程でマザーボード+CPU一式を手配したところである。このように原因さえ特定できれば、そうコストをかけずにPCを蘇生させるのも無理ではなさそうだ。(10. Apr, 2005)

2.5インチIDE HDD-USB 接続キット [追伸] 勿論、修理などということは一切考えずに、「ならば新しいのにすれば良い」という考え方を持てれば幸せだ。躊躇なく旧PCを捨てて新しいPCの選択に心を躍らせるというのも悪くない。ただ、筆者にはツマラナイだけである。或いは,中のデータだけが欲しい場合には右写真のような HDD の USB接続キット(約千円)でデータを吸い出せば事は足りる(もちろん、HDDが生きている場合のみ)。全く便利なもので、NTFS でも問題なくマウントできるようだ。

雑感へ

PC処世術トップページへ