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PC処世術 - 雑感:次世代DVDの規格争いはビデオテープの再現か


 “次世代DVD規格”と称して、「BD(Blu-ray Disc)」と「HD(High definition)-DVD」が闘っている。かつての「ベータ対VHS」と揶揄されることも多いこの企画争いだが、これまでの各種リムーバブルメディアの盛衰を眺めてみると、結局とばっちりを食うのはユーザーであった。
 したがって、できれば規格闘争なんぞに関わり持ちたくないと思うのが人情である。その民意を反映してか、くだんの次世代DVD に関しては、その規格闘争は批判に曝されることも少なくなかったようだ。
 そしてその声は,BD/HD−DVD両陣営の首脳にも届いたのか、一時は「歩み寄って規格統一を果たそう」とする動きも無いでもなかった。要するに、自社技術で独占する利益と、市場を二分して闘うことによってユーザーにソッポを向かれるリスクがトントンということなのだろう。

 規格統一の動きが出てきた背景には,コンテンツを“物”として購入する習慣が永遠に続くか分からなってきて、ユーザーが向くべき“ソッポ”が出現したことがあるのだはないだろうか。昨今の音楽販売に見えるように、“配信”という形態の浸透はけっこう早い。少なくとも、通信速度の進化はリムーバブルメディアの容量や速度の進化よりも更に速く、問題は物理的なディスクの容量と技術ではなく,著作権問題などの運用面に比重がおかれつつある。
 さらに次世代型DVDが浸透する時代(4〜5年後)を考えてみると、それは恐らくテラバイト級HDDが安価に売られ、PCへの搭載が常識となる頃のことだ。その時代における30〜50GBのメディアのインパクトというのはどんなものだろうか。それは、かつてHDDが1GB程度だった頃のフロプティカルディスクとMD−DATAの中間くらいの容量に相当する。そう考えてみると、次世代DVDのベンダが合従策を考えるというのは自然なことだ。

 だが、ご存知の通り、次世代DVDの規格統一の縁談は破局になった。伝え聞く話によると、結局 Blu-ray/HD-DVD の両陣営とも互いの方式のメリットを主張するだけにとどまったとのことである。
 両陣営を構成する各社がライセンス商売するために揃えてきた各種特許や、ライバル他社を引き離すための有形無形の技術やノウハウ、あるいはメディア製造メーカーとの関係といったハードルを,結局クリアすることはできなかったというわけだ。
 筆者としては、次世代DVDを特に急いで導入しなければならない理由もないため、導入は勝敗がついてから検討することになると思う。なので,どちらの方式が勝とうが知ったことではないのだが、両陣営の敵は相手陣営の光ディスクとは限らないという点については、余計なお世話ながら心配してしまうところだ。
 先にも書いた通り,ネットワークやHDDの進歩のスピードは非常に早く、ユーザーは規格争いのとばっちりから逃れる選択肢を持ちつつあるのだ。ユーザーに“ビデオテープ”以外(録画手段として)の選択肢が無かったベータ対VHSの時代とは、状況は同じではないのである。合従策を蹴った(ライセンス商売優先を採った?)そのクローズドな戦略が,互いにとって合掌策となることも、無いとは言えない。(4. Sep, 2005)

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