短歌会 フランシーヌの場合(仮題)
3月1日〜 1997年
西●いびつなるカワラケ「カワイィ」と笑う君いますぐ行こう歌舞伎町ピクニック
中●家にても 海にても癒えず 傷心の 渚の川に かわらけの片
宮●「かわらけに 唐のおもかげ いまはなく 家に溢るる ポリ容器のアジケナサ」
西●奇岩立つ里に人も住むといふ湧きいる地下水季節を映す
中●地下水に 顔をうつして 見るならば おのが身をして 奇岩なりやと
宮●「奇岩城 ルパンはいずこ 井戸の中 地下水に映る 我が顔とも知らず」
西●彗星が月を巡れる朝未だき春の風邪連れ蕾を見上ぐ
中●ああ今や 月に残れる 足跡よ いまだひきずる 春の風邪
宮●さめざめと 微熱をまといて 眺む月 蒼い影に 春の香漂う
西●軒先の看板ばかりが滔々と時を愉しむ懐かしき路地
中●男の背 縦にならぶる 看板の 夜毎見上げる 路地の一角
宮●路地裏に 忘れられてる 看板は かわりゆく世に かわらぬ記憶とも
西●歌友に駄首送らむとする折りに記したことなき日記を思ほゆ
中●よく見れば 宇宙が見える 一葉を 日記におさめる デジタルカメラ
宮● 一葉の 夢の残像 口惜しく 脳に日記が あればいいのに
西●「ぷふい」しか覚えていない世界故死霊のごとく悲しみ深し
中●死霊とは 漂うものか 憑くものか あなたなのかい? わたしなのかい?
宮● 春間近 かたい蕾の 緩むころ 死霊も嬉し サクラの下で
(サクラの花の下には、死霊が集うという話を聞いた
ことがある
また、サクラの下に埋めて欲しい人、多いんじゃないかなぁ。)
西●綿毛舞ふ粒子やさしく朝の幸電車でひとりごとす晴れやか
(今朝、電車でファンキーな切れてるボーイに会いました。
「おまえら出てけよっっ!! みんなセコムのコントロ
ールセンターに来ているんだよっっ。
ここはセコムでーす。おまえは出て行けよっっ」
と、ずっと中空に向かって叫んでいました。
朝から、とてもいい気分になりました。)
中●夢ごこち 綿毛舞うよな 一夜にて 死霊になりても 忘れがたずや
宮●綿毛舞う 春の足音 そこかしこ かすむ景色に しばし佇む
(北国のドロノキ(ポプラ科)は開花時に綿毛が飛びます
その風景は、北海道〜モンゴル〜ヨーロッパの春の原風景
の一つなのです。)
西●明け方に見し夢強く焼きつけり建築のなき世界の匂ひよ
中●夢のまま 大きな穴を のぞき込む いつ果てるのか わが建築
宮●プレーリーの ライトの建築に 畳敷き 眺めてみたや 地平の雷雨
西●茶清(すが)しく吐息も聞こゆ有精卵ただひとつ置く皿充たすカノン
山●有精卵 ひよこになれず わが腹みたし 化けて出るほど 恨みはないか
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