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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

5月12日〜 1997年

■電話

西●隠棲の古きアナログ電話ゆえメッセージ一つ残せぬ日曜 

宮● 洗濯機 機械と水の 音と君 電話のむこう 日曜の午後

秘●電話する 用もないのに ベル鳴らす 寂しさまとい 見つける声は

山●誰もいぬ 部屋の電話が 鳴りつづく 線をたどれば 待つ人ひとり



■煙草

西●筋引きて光の中に帰り行く煙草よせめてわが身を汚せ

山●暇つぶしのいたずら忘れたオトナたち沈黙、煙草を友達にして

宮● 照れ隠し そらす視線の 泳ぐ先 紫煙燻らす 煙草の炎(ほむら)

ひ●祭りごと たった一人で 感謝祭 ベランダ、のろし タバコの煙



■タメ口

西●哀しうてタメ口きいてみる我に国語教師のようなる君遠し

山●待ち遠しやっと口にす一言は女王様へのタメ口でなく

宮● タメ口に なったとたんに フェアとなり 相対的に ムーチョクラーロ

ひ●タメ口でだめよだめよと言うおまえ それならそれで はい!さようなら



【乳 でイック】

西●大いなる乳の裾野の雪原や頂の紅スピノザ迷ふ

宮● 肩凝ると 巨乳うらみて 口尖り 重さを計る 我を咎める

ひ●夢明けの白く濡れたる艶の肌柔く手に剥く甘くも乳房



【蜂蜜 でイック】

西●夏未だき君暖める蜂蜜に草の匂ひが満ち充ちて罰

宮● 蜂蜜を かけて嬉しい ホットケーキ まあるくまるく ホットプレート

ひ●小指知る 引き落つ蜂蜜 甘すぎて たどる紅色 唇熔かす



■里

西●唇に乳首のようなる疣を持つ狂女ありかし里のいざよひ

宮●ステテコで 近所を歩く オヤジども あいもかわらぬ 里の風景

ひ●里に住む里なき人の想い花ゆめ去り香る街のまにまに



■日帰り

西●湯浴み後の後れ髪つゆに垂(しだ)れて陽を張りぼての日帰りの宿

宮●日帰りと さよなら交わしたはずなのに タクシー飛び乗り 君の家へと

ひ●二人つれ「休憩ですよ」と言いづらく口を濁して日帰りの夜



■風邪

西●風邪の身で立つ曇天の錠外る薔薇熱帯びて君が耳朶(じだ)見す

宮● 風邪の朝 握力戻らぬ 歯痒さに 君に隠れて 3回分を服用

山●早朝に 妙に浮かれた 口をきき 熱を発して 風邪と知る

ひ●「春香さん、熱ぽいんだって、大丈夫?」一風邪ごとに言い寄る夏樹



■台所

西●慈姑(くわい)落つ瞬間長し台所蒸気の音とかぐわしき手と

山●台所全裸で家事をするあなたそんな風に私もなりたい

ひ●台所切れた指先したたらすシンクに溶けて咲く水の花

宮● 手伝えと 茶化す男を たしなめる 君台所 火と水祭る










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