BEFORE
NEXT

短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

6月2日〜 1997年



宙返り黒い大きな紙魚(しみ)のあるピエロの泪落ちることなし





■リゾート

宮● 遊びなき 不倫の二人 初島で 夜光虫には リゾートと名乗り

【ピエロ でイック】

西●半端者きちがいピエロと呼ばれたく今夜も意味なく繁華街に寝る

山●宙返り黒い大きな紙魚(しみ)のあるピエロの泪落ちることなし

宮● 人のため 己のためと グルグルリ ピエロの涙 注ぐ海原

ひ●闇まとう 刹那のピエロ の軽業は 遠き数理の 空を舞いゆく

黒●浮き世から 放れて笑う ピエロたち 仮面の中は 死者か悪魔か



■番外

西●繰り返しかの娼館に辿り着く夢幾日も見続ける部屋

宮● 燃え燃えて めぐるこの世に グルグルリ ヒゲなぞる君と 一つになりて

西●天駆ける足持つ人よ天駆ける心遥けき道を描きなむ

ひ●異国にて 大いに駆ける その足は 熱く優しく 道行き語る



■天気予報

西●照葉樹血の中に育つ君が聴く天気予報に温かい雨

山●子のごとく野球の日を前にして天気予報に泣き崩れる

宮● 天気予報 はずれて嬉し 梅雨の頃 君はニコニコ 御苑の鯉に

ひ●千切れゆく 夏の雨雲 白みつつ 空のモザイク 見る天気予報

黒●天仰ぐ ひまわりの顔 美しく 明日の天気を しるよしもなし



【風鈴 でイック】

西●ビードロの風鈴手離れ道に散る人垣分かれる一瞬よ水無月

山●風もなく汗流すまま風鈴をこの身に響けと指でつまびく

ひ●境界に 立つ足震え 聴く風に かすかに響く 風鈴の音

宮● 海凪ぎて 鳴らぬ風鈴 黄昏て ホオズキ鳴らす 後れ毛の君

黒●家々を 覗いてまわる 風とおし 他人のにおい 風鈴涼み



■探偵

西●今日の午後鳥が一羽墜ちるのを見た。双子の探偵のように走ろう

山●へらず口叩くが君の探偵稼業フィリップマーロウ架空の友よ

山●忘れてた捜し物を思いだし、いつのまにやら君の探偵

宮●万能の 五徳ナイフに なりたいと 走る探偵 つぶやけず

ひ●湘南の 布、三角を 笑み選ぶ ビーチの探偵 色に溶けつつ



■昼休み

宮●5分くれ キメタつもりが はずされて ランチともにす 昼休みとは

西●ナラの木に犬も登らせ喚きおる尻を押さへて長い昼休み

ひ●道端の 黄色いリヤカー 谷の空 彼がたたずむ 昼休みの街

山●昼休みオフィスビルも軽くなり誰もが空を仰ぎ見るとき



【団扇 でイック】

ひ●香り舞い 誘う羽根触れ 立つ肌の 首筋透かす チャイナのうちわ

宮●縁側で 麦茶を前に 我に向け 君振る団扇 煽る冷汗

西●大硝子二十五枚に溢れたる大河渡りて団扇の頃合ひ

山●浴衣の夜うなじに髪がはりついて腰の団扇に花火も揺れる






Eメールの宛先はこちらまで



短歌会 表紙にもどる




FUZ HOMEPAGEにもどる