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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

8月25日〜9月5日 1997年



砂遊び 虫に モーゼがホウキ振る 大雨!洪水!奇跡はその手に!   



■大雨

西●流される。晩夏の深夜の大雨に 一皮むける日焼けもなきまま

ひ●風無き日森の木の葉のさざめきは山水濡らす大雨を呼ぶ

山●水滴は海と山より風にのり我が身清める大雨となる

宮●一つ傘 花火も霞む 大雨に 汗を忘れて 寄り添い急ぐ

黒●砂遊び 虫に モーゼがホウキ振る 大雨!洪水!奇跡はその手に!



■妊娠

宮●妊娠す 体と心 見やりつつ 10月10日の 男のガマン

ひ●産み月のほうずきのごとき腹さすり優しき瞳ささやく口と

西●刻々と空押し広げ妊娠や羊泉滾々(こんこん)出づる淵多かれ

山●妊娠に驚く男ここにあり 我が身のせいと脳は思わず



■ぶどう

宮●歩を止めて 汗かき覗く ぶどう棚 香る房垂れ 共に待つ秋

西●選ばれし土壌の恵み貧舌に転がし葡萄の奴婢の夢

山●白き紙 ぶどうにフワリと果樹園の 心をつくす まあるい一粒

ひ●葡萄の実ひとつ摘まんで潰してみるぬるい甘さ寝覚めの朝に



■ワイン

西●ワイン飲み葡萄酒愛でてVINに溺るふらんす遠しまして祖国よ

ひ●指をつけグラスをなぞるまあるくねワインに流す女が1人

山●初めてのワイングラスを響かせて 気分も赤と想いはひとつ

宮●ティストし NOを言い切る 勇気とは 晩餐に賭ける 一期の歓び



■ビール

宮●秋空に 泡吹き飛ばし 流し込む ビールに弾み 話題転がる

ひ●こりゃうめぇ五分刈り頭を掻きながら大工の棟梁ビールで涼む

西●ビール苦く父見上げたる幼少の夏の終わりの西瓜の甘さ



■ダイアナ

ひ●ダイアナの事故死の知らせ賑やかに微かに響くたまごっちの音

宮●衆目に 鉄屑となりた ベンツには 生命の影なし 眠れダイアナ

西●処女性と月の謂なる女神とし幕開き言祝ぐ八月のダィアナ

山●夢でなく神話となれりプリンセス 我らが子羊ダイアナは逝く



■立秋

西●夢の端の境もゆくりと生まれ来て立秋の日に西部へ向かう

宮●立秋も 笑い飛ぶ空 千万の 唸れクーラー ヒートアイランド

ひ●秋立つか夏の想いも川下へ筋引く汗の立秋の日に

山●立秋と昔人とは気の早い 夏は尻尾を振り回し



■蜩(ひぐらし)

ひ●杉林三世の暮らし守り見て蜩の音絶やすこと無し

宮●森に降る 蜩の声 揺れる影 去り行く夏の 夢を彩る宮

西●長き影泥のズックを際立たせヒグラシ杜の遊びは半ば

山●蜩を日長一日浴びてみる 声音変わらぬ未来も過去も



■バーベキュー

山●バーベキュー海辺の石を熱くして 今、魚たちの生き地獄

西●バーベキュー野球、死球背中石焼きぐるぐる弩級プールの酔夢

ひ●バーベキューお灸サンキューあっちちち大人の火遊びオフィスの花よ

宮●バーベキュー 夏の海辺で 夕日待ち 昼の加速度 残り火に翳し



■サンダル

ひ●砂利浜で素足で遊ぶ子供らにサンダル履けよの言葉を呑む日

西●サンダルと素足のあはひ行き来する砂、大気あり潮の国

宮●雨の日は ジャブジャブ道を のし歩く サンダル嬉し 夏の賜物

山●夕闇と波が消しゆくサンダルの跡をも一度踏みしめる






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