短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON
9月13日〜9月26日 1997年
時刻表誰が校正するのかな 愛想ふりまく各駅停車
■指輪
西●秋の日の日輪一条揺す風の巻きて指輪はふるふる笑ふ
宮●何故ゆえに 嵌めてなおまた 何故ゆえに 違和感消える その日は来るのか
山●高いわねそんなことない大丈夫 ひや汗流る小さな指輪
ひ●料理する妻の手を見て理解する指輪無き手に溜息深く
■時刻表
西●旅人が冬の夜一人駅に立つ説話尽きせぬ時刻表持ち
宮●今日もまた この一冊で 汽車が行く 枕に低し 時刻表
ひ●今出るよそう1人だよまだ決めてないあの時刻表もらっていくよ
山●時刻表誰が校正するのかな 愛想ふりまく各駅停車
山●時刻表零時五分の君はここ 八雲の駅の少し手前
■遅刻
黒●常習犯 「ずっとあなたが好きでした」 同窓会の 遅刻 告白
ひ●遅刻した遅れた時計醒めぬ目でおどけてみせれば冷たい視線
西●コマ送り送られ閉じる扉追う瞳に眩し遅刻の白光
宮●遅刻して 並んで歩く 理事長の バツが悪そな 顔に重畳
山●朝飯を食べてるときがもう遅刻 ひとり校門開けて寂しく
宮●引き分けて 眠れぬ砂漠に 酒もなく 頭を使えと 寝言の小村
■<秋刀魚>
西●空のあを目深う座す(います)秋刀魚哉
西●客人(まれびと)に秋刀魚饗(もてな)す夕景を擂りてすずしろいよいよ白し
宮●市巡り 魚屋の前を 妊婦連れ つわりがゆえに 秋刀魚に黙礼
ひ●秋をゆく色づく銀杏ゆらす風秋刀魚の腹の苦き香り
黒●好物を 食べる表情 獣の目 気づかないうち 油手に秋刀魚
山●久しぶり青空見える夕暮れに秋刀魚の風が吹く頃になり
■<番外編 山椒 箱根の旅路にて詠む>
山●自衛隊、選挙の響き木霊(こだま)する箱根の空に人垢多し
山●出だしにて豆腐、とろろのうまさ過ぎ 旅の空にて胃痛抱える
知客(しか)茶屋(箱根湯本)
にて、豆腐ステーキ、とろろを食い過ぎて
2人とも腹が痛くなったのでした。
箱根に行くことあったらお薦めです。(山椒)
山●幾たびも幾たびもまた箱根の湯 樹々の雫は肌を染め上げ
山●湯煙と雲のたなびき融けあいて 人の心もかくあれかしと
山●漂える肌に残るは湯の香り 悲しき帰路にソルベ・ドランジェ
(オレンジシャーベット)
■茄子
ひ●目が醒めて浅漬けを噛む田楽の昼と夜の焼き、茄子な一日
西●紫の尻いぢらしき少年に秋茄子はただ笑ひてゐたり
宮●ああ嬉し 皿をはみ出す ナス三本 虫も嬉しき 月夜の空と
山●秋茄子を嫁に食わして見てみれば ただおいしいと食欲の秋
黒●イイ女 その唇を思わせる 鮮やかな色 茄子に 欲情
■団栗
西●団栗のひとつみつなど落つる音風紋起こす昧爽の軒
ひ●あっ、痛てぇ、頭上を襲う木の実、雨、台風迎え団栗の日に
宮●どんぐりの 光(てかり)集めて 宝とし つるり転がる 月の帷
山●冬眠を夢に想いつ団栗の硬き命を握りしめる
■松茸
宮●松茸は 海を渡りて 何故ゆえに 凶作しきりの 北朝鮮より
ひ●松茸の首筋なでて照れ笑い茶髪のショート明るい女
西●松林眼を凝らせども松林未生の肌の奥にや松茸
黒●膨らんだ 財布を握り いざ出陣 透き通る切り身 松茸の野望
山●松茸の2ヶ70円の化合物お吸い物さえバーチャルとは
■あけび
宮●秋霜の 朝餉の膳に あけび添え 眺む色合い 冷水甘し
西●あけび笑む山の通ひ道(じ)一文字牝馬のやうにはぶはぶ喚く
ひ●あけび有り奇妙な姿に眼をしかめ我が股を見てこれもありかと
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