短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON
9月27日〜10月10日 1997年
豊穣の 囃す声立つ 神無月 ひねもす汗に 人である幸
■収穫
西●刈り残る稲の根が引く直線に沿う影大き収穫祭
ひ●稲穂振るその音重し声はずむ深まる秋の収穫の日に
宮●調整し 補助金漬けの 収穫祭 官の指図を 囃す声なし
■へちま
西●「へちまでね。スポンジはいや」といふ乙女いつもより二度熱い湯嬉し
宮●青々と にょっきり下がる なんじゃらほい へちまと唱え 笑う秋空
山●翁の背流すへちまの年老いて 縮み具合は主人を真似て
ひ●縁側で猫を枕に寝転んで仰ぐ秋の日へちまな気分
■蜻蛉
西●ゆふくれのいしきのうらにむらくもとまんけのあきつあれにすみたり
「夕暮の尻の裏に叢雲と万華の蜻蛉吾に棲みたり」
ひ●土手すすき綿毛の秋風縫うてゆく一尾の蜻蛉雲を抜けつつ
宮●昼下がり 空映す池 風もなく トンボ羽干す 細き肩にて
山●我が手にとまりし山蜻蛉 おまえの風は冥土まで吹く
■十五夜
西●盃に瞳を灯す十五夜の白露ありて生きとし生くる
ひ●飴色の里芋積みてすすきいけ迎える月にまだら雲流る
山●十五夜の光りを浴びて透きとおる 掌(たなごころ)には魂ひとつ
宮●金木犀 薫風運ぶ 十五夜の 台風一過 眩しき夜道
■金木犀
西●石榴割るる小さき丘に金木犀何処ともなくまだら絵の恋
宮●金木犀 薫風運ぶ 十五夜の 台風一過 眩しき夜道
ひ●香り呼ぶ遠き昔日祖母のしわ命送りし金木犀よ
山●金木犀香りは誰のためなのか 夢にあらわれ ふれもできずに
■秋雨
宮●山間の 撚れる筋に 音もなく 秋雨見やる 君の肘枕
西●秋雨に始まる朝の室内に闇とどまれるなどか懐かし
山●秋雨の心は夏に置き忘れ 冬の触手にイヤイヤをする
黒●秋雨が 君のにの腕 はじく日の いつもより遅い 日没に笑い
■秋霜
西●肌寒き明けの遠きに声生ず秋霜の路地にマリーと別れき
山●徹夜明け始発で帰る秋霜の白きベールに瞼を閉じる
宮●秋霜の 轍鳴らして よろめきつ 蒼き瞳の 行方を問わず
ひ●廃線の朽ち行く駅を想い見る通いし日々に降る秋の霜
■神無月
西●触れずともお互い辞書など無縁だが、この神無月は口も噤いで
山●肌によくふらり出かける神無月 旅の友にはモミジと風か
宮●豊穣の 囃す声立つ 神無月 ひねもす汗に 人である幸
ひ●雑踏の踏み行く音が耳触る冷えし暁神無月の朝
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