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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

10月11日〜10月31日 1997年



かぼちゃ産む肥えた畑を踏んでみる 足首埋まり秋空高し 



■南瓜(かぼちゃ)

宮●カボチャで ちゃちゃちゃ カボチャで チャチャチャ ラララ、カボチャでチャッチャッチャッ

西●デジタルな恋文書きて南瓜ありやはらかき口しばし黙する

山●切り割りて緑の皮に包まれる地球のごときカボチャの体

ひ●かぼちゃ産む肥えた畑を踏んでみる足首埋まり秋空高し



■山芋

西●昨夜確か頭の遠くに聞いていた雷雨何処に。山芋を摺る

ひ●草分けてわけても草の山肌に今日の夕べの山芋探る

宮●無念にも 折れた山芋 君笑う 似合わぬ軍手 蔕を抓みて

黒●山芋の 千切りがほら こんなにも カッター欲しさに フリーダイヤル

■白足袋

西●ぬばたまの夜に白足袋浮き上がりひとの時間の極みゆくまで

ひ●日向ゆく眩しく光りさわさわと猫の白足袋かむ鼻の音

宮●白足袋の 鞐(こはぜ)六枚 かけさせて 鼻歌交じりの 妊婦は嬉し

山●白足袋の擦る音を聞く枕元めでたき朝にまた目を閉じる



■薄曇り

黒●薄曇り 打ち合わせなしに ペアルック 天気を理由に ツイードを着る

宮●薄曇り 風なき坂の 青き柿 床屋帰りの しわぶき一つ

ひ●薄曇りナスを両手にお手玉とうまくはゆかず落つる紫

山●薄曇り寒さに腕をからませて 坂と空とが溶ける夕暮れ

西●指先に季節触り来る手水鉢八十を思ほゆ 薄曇り、つとめて



■番外

山●新生児やわらかき息吹き付ける 命はここに夢をたずさえ



■ひざし

ひ●渡り来る鳥が舞い飛ぶ秋空を日差しが飾る枯葉一枚

西●片手挙げ日差し遮るやうに享く生れ来し者よ怪しみ笑へ

黒●壁つたう 陽差し追いかけ 何思う 判ろうとする 握り返す手

宮●ひざし受け 景色動かぬ 秋日和 境内の落葉 もの憂げに舞い

山●青々と長き芝生を踏みしめて 陽ざしを友に右翼手の秋  



■牡蠣

山●檸檬汁かけて一気にするすると 生牡蠣すぎる君の喉元

ひ●肌寒し秋の海見て牡蛎を揉む磯辺の食堂主の日課

宮●ひとけなき 港に積もる 牡蛎殻で 少年漁る 己の勝ち貝

黒●カキフライ ライスおかわり! ソースない! 眉間にシワヨル 洋食屋の主

西●秋などて夏季てふ名持つ幸食むや牡蠣、柿もちて花卉でも飾らむ



■梨

山●唐突な宅急便を開けてみる 母の手紙は梨の間に

宮●たわわなる 童話の記憶 蘇り 店積む梨に 心踊らず

黒●昼休み 「食べる?」と 甘く なまぬるい 楊枝の梨で 心盗まれ

ひ●梨もいで冷やすことなくかぶりつく高き枝木にもず一羽いる

西●秋の夜の永さひたぶる食卓で梨剥きておる。そのやうな夜



■引っ越し

西●捨つるべき言葉多かれど埃積む引っ越しは黙しひねもす続く

山●引っ越しの知らせは返ってきましたね 一期一会と言えど悲しき

ひ●真四角のすみまで照らす秋の日に越してから先の引越し想う

宮●我荷物 さばく手際の あっぱれに 柿でも剥こうか 君との引っ越し



■焼き肉

西●焼き肉のけぶり充ちたる小部屋にて吾の臭き肉ますます臭し

ひ●食べるより先に焼く人あわただしい 焼肉かきこみ胸焼く夜よ

宮●ヤキニクで 肉奪い合う 盛り上がり 欲の共振 秋もたけなわ

黒●焼肉の 滴る汁を 1リットル 集めて飲んでも おいしくはない

山●食欲に牛もあきらめ刻まれる ミノ、タン、カルビなどと呼ばれて

山●頼むからほんにお願い韓国に勝って焼き肉食い放題





■曇り ひ●曇りゆく鏡に映る秋の空山の端溶かし初雪間近

山●曇り空街角だけがただひとつ この世のすべてと思う日もあり

宮●高曇り 磯辺を歩く 淡き影 風なく揺れる シロバナタンポポ

西●露草のやうに太陽が咲いている。曇り静かな日の脆さについて



■まだまだ

宮●まだまだと予測・再現に我消えて球破り月仰ぐ国立

ひ●まだまだとひとがんばりと想うころ いつの日か咲く山のユリを見る

山●まだまだとボトル片手に微笑んで 無理にすすめぬ人に変わりぬ

西●熱き湯に浸し炒れども山胡桃まだまだ堅く掌に深く握く



■万引き

宮●モンゴルで 史上初の コンビニは 万引き横行 3日で閉まり

モンゴルの首都ウランバートルに、サッポロというコンビニができたので すが、日本と同じ甘い監視体制を敷いたため、万引きされまくり、3日く らいで、店を閉じてしまいました。 その後、再開しましたが、各棚に一人づつ、店員が監視のために張り付い ています。 で、詠める。

ひ●コンビニで両手一杯釣りを受け、脇の雑誌はただ?これ万引きか?

山●躊躇なく吊り広告を万引きす少女はヒシと反町(ソリマチ)を抱く

西●期せずして万引きすなる昼下がり主とともにうなだれている



■賽銭

宮●五円玉 賽銭箱に ストライク 五百円玉では ダメなんだよなぁ 

ひ●賽銭の落ちゆく音とあの頃のあわき想いと海ゆく風と

山●コトコトと賽銭ひとつに願い事 五つ六つと口ずさむ

西●賽銭を頭に受ける元旦の太陽は遥か高くいたり








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