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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

2月1日〜7日 1998年



気まぐれな 細胞のよに 乱されて 宇宙の法則 なんだと割り切り   



■不倫

ひ●不便やだ不出来もいやだ不況もねでもでも不倫は蜜の味かも

西●いいじゃんどうせこの世はとかなんとか勇気凛々不倫リンリン

山●二人だけ胸に秘めたる恋の名を不倫と言うは世間だけなり



■呆気なく

ひ●あのころの望み色々買いたかった食べたかった今呆気なくある

山●呆気なく陽が落ちる日々過ぎてゆき あんまん二つ握る両手

西●冬の蠅動くことなし呆気なく青空の影過ぎてゆきにけり

黒●少年の 記憶は実に 揺るぎなく 思い出されて 呆気なく経つ



■未亡人

西●その瞳抜けるやうにあり未亡人愛し子抱くその密けき強さ

山●未亡人何を語るか通夜の空 浮かんで消える言葉を闇に

ひ●下宿消え未亡人去り忘れゆく都会に舞うは風俗チラシ

■宇宙

西●今頃は埴谷雄高よどの辺に夜の星座にぷふいを探す

ひ●引力に出るに出られぬ我が宇宙狭き巡りに深く溜息

山●ビッグバン宇宙に地球を蹴り出して どこへ行くかは知らぬが仏

黒●気まぐれな 細胞のよに 乱されて 宇宙の法則 なんだと割り切り



■かもめ

山●白き点空に絡まり海に落つ 寒中カモメただ忙しき

西●かもめ染む碧にはあらで原色の不夜城に染む空の低さよ

ひ●白いね先っぽは黒いかもめかなあっ飛び込んだいっぱいいるね



■つづく

黒●お目当ての つづき観たさに 家帰る もてあます夜の 曜日間違い

西●愛憎の続きを見たく日々送る背理の心に咲くヒースクリフ

山●カウンターそ知らぬ顔で腕時計 うなずきマスター片づけつづく

ひ●豆を踏む乾いた音に足醒める2月3日の夜道は続く



■靴

ひ●散歩道まっすぐ乾いた土手の道風のまにまに聞く靴の声

西●棚奥に古きベロアの靴ありて祖父の歩みし春はまた来し

黒●君に逢う 道のり踊る 靴を履く 近づくために 紐はほどける

山●青空へ飛ばす日々など忘れたり 靴はみちびくいつもの道へ



■ベルト

西●カミソリを太いベルトで軽快に研ぐ音待ちて肌火照り出す

ひ●ベルトマン全身巻いたベルトマン手持ちぶさたに佇むバス停

山●息できずベルトの穴をひとつ開け 妻に隠してコートを着る日

黒●腕時計 革のベルトが なぜこんな 臭くなるのか 猫も背ける



■腕時計

西●三本の針それぞれに一定のリズムを持ちてマイ腕時計

ひ●腕時計時の刻みを忘れつつただ指先で触れてみる夜

山●はじめての左手重し腕時計 時がたつのがやけに遅い日

黒●腕時計 持たない生活 はや6年 原始的かな そろそろ靴も



■ピアス

西●穴空ける二つ目の穴ピアスがため少しは風の通ひ道にも

ひ●髪絡むピアスが止める風の道浜辺に寄せる波聴く日にも

山●いつだろねピアスの穴の閉じるとき 舌ざわりが寂しくなるね








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