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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

3月1日〜31日 1998年



アピアーと 現われ出ずる ジェンダー・シフト 馴染んだ仮装 あれ、ディサピア ー   



■河童

ひ●かっぱ去り幾年過ぎしこの川の川面に映る雲はるかかな

西●鏡台に細き抜け毛の数かぞへ河童頭を撫でる夕暮れ

山●河童など不思議でもないこの世とて それより女 妖怪変化



■橋

西●太鼓橋踏みしめ渡る小春日は亀も騒ぐよマイフェアレイディ

ひ●橋渡る足の短いダックスのパタつく耳と春、花、蝶よ

山●老人のゆくりゆくりと登りゆく 夕焼け近い歩道橋



■雑誌

山●ふうらりと憑かれたように宙を舞い 雑誌のごとく広がる街へ

ひ●埃まう廃虚に散らばる出来事は思いも醒めた雑誌の模様

西●星霜の疲れの果ての雑誌あり七日の命に気っ風あれかし



■春一番

西●啼き魚蒼き目辿る指先に過去も目を閉づ春一番

ひ●涙出る無意味なほどに湧いて出る花粉が知らせる春一番

山●口あけて春一番の声を待ち 雪虫つまむ北の便り



■爪

ひ●深爪の指の痛みが連れてくる昔日の日々思い巡らす

山●流し目と声なき囁き前にして 爪をとぐ音聞こえるような

宮●インド人 ひなびた爪で 祈る川 首を横振り ポジティブ・ジェスチャー

西●甘皮を囓りて深くもの思う亡き友の爪焼きしあの火よ



■麒麟

西●ほうほうと燃ゆる鬣(たてがみ)ゆるり抱へて麒麟と巡る星宿の里

山●夜明け前麒麟に託す我が祈り 遠く雷鳴轟く空へ

宮●見えねども 駆せ飛ぶ影に 波打つ気 繁吹く天空 麒麟は嬉し

ひ●春の夜の空駆ける音風を呼ぶ闇に吹く笛麒麟を呼ぶか



■仮装

ひ●新芽摘む残らず春の新芽摘む隣に負けじと仮装の家族

山●人間の仮装のままで墓に入る 素顔忘れたピエロのごとく

西●囁いた。「仮装のための器持つヒトという名の仮称とともに」

宮●アピアーと 現われ出ずる ジェンダー・シフト 馴染んだ仮装 あれ、ディサピア ー

仮装と聞いて、ホモを思い出しました。インドに出張中、 インドに仕事で3年間くら「いて、インド人のホモから好かれたという日本人から、 その態様を聞きました。
彼らは、「アピアー」と甲高い声で現れ、ひとしきり話した後、 「デイサピアー」とまた去っていくとのことでした。インド人のホモにもカーストはあるのだろうか?などと。



■こんにちは

宮●「こんにちは」 見知らぬ少年 頭下げ 胸撫で下ろす ここは鹿児島

西●こんにちはその声に肩聳やかす嗚呼真昼に二人のエレベーター

山●一里塚 今はコンビニ こんにちは セブンイレブン 挨拶する日

ひ●こんにちはそろそろいかがと誘う声明るい笑顔あなたは死神



■エスカレーター

宮●色白の 受付嬢に 捧げよう エスカレーター 逆乗りの巻

ひ●笑い呼ぶエスカレーターあの人もまた動いているはずと乗って待つ顔

山●右腕をすり抜けていく黒髪が 香り振りまくエスカレーター

西●中二階に向かう短いエスカレーター、その数分にある宇宙のすべて








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