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短歌会 フランシーヌの会
HAPPY TANKA BALLOON

4月16日〜30日 1998年



なんとなく 別れてしまった 恋人に おごった映画の タイトルを忘れ   



■映画

黒●なんとなく 別れてしまった 恋人に おごった映画の タイトルを忘れ

西●初めての銀幕あまりに眩しくて水原とともに映画血に入る

山●ひとまわり桜吹雪のスクリーン 瞼の映画 我ひとりの映画 

ひ●昼寝する開けきらぬ夜星も無い場末の館ピンクの映画

宮●朝入り 映画に耽り 夜出でる 記憶の揺曳 海に流そう



■炭

黒●万屋の 色褪せて並ぶ マネキンの 眼差し貫く 備長炭あり

西●炭の石流れつく浜焼けいたり山はひたすらざわわざわわと

山●炭焼きの煙たなびく山空に ひさしく足を運ぶことなく

ひ●うつうつと定まらぬ目で宙仰ぐ炭に成りゆく焼肉けぶる

宮●裏山の 炭釜の主(ぬし) 晴れと読む 雨に見舞われ 狸と心得

宮●煌煌と 焼けたであろう 御花炭 操る白き手 ほとぼりに揺れ

御花炭(おはなずみ)とは、椿の花、木の葉っぱ、マツボックリなどを、 外形はそのまま、木炭化したもので、生け花に使われます。最近、木炭に 関係する仕事をしていて、ずいぶん素敵なものだなぁと思いました。

■蕎麦

宮●蕎麦職人 暖簾の陰で 腕を組み 客の気配に 耳を欹て

山●もろきゅうに一杯あてて蕎麦でしめ 江戸っ子気分の春の夕暮れ

黒●ひと一人 静かな蕎麦処で 箸をとめ 賛美歌が聞こえた ような気がして

西●新蕎麦の実を挽く石臼ゆくりゆくり世紀の暮れにゆくりゆくり

ひ●この色はこの感触は悪夢呼ぶ悪魔の髪か蕎麦ぞ怪しき



■能面

黒●こわいよお こっちを見てるよ お母さん! 壁かけ能面 子供に嫌われ

ひ●窓もない、壁一面の能面の吐く息が言う今日の眺めを

西●木の中に隠れいたる能面を彫り出す刀に胸当ててみむ

宮●やな感じ 条件反射が 異物感 能面宿す 脱力感

山●能面の気持ちわからず夜の闇 笑うか怒るかじっと待つ時












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