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― 『赤ずきんチャチャ』のページ ―

清瀬 六朗


『赤ずきんチャチャ』とその周辺

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チャチャとアメリア

 神坂一の小説『スレイヤーズ』(富士見ファンタジア文庫)がアニメ化されたことがある。主人公リナ・インバースは林原めぐみ、ガウリィが松本保典、ゼルガディスが緑川光、シルフィールが冬馬由美という配役だ。関東地方ではテレビ東京で金曜日の夕方6時30分から30分の枠で放送されていた。『赤ずきんチャチャ』は金曜日の6時から30分の枠だったから、その次の時間帯である。最初のアニメ版『スレイヤーズ』(無印)の放送は1995年4月から6月までのあいだだけ『チャチャ』と重なっている。

 この『スレイヤーズ』シリーズで「プリンセス」アメリアを演じたのが、チャチャ役の鈴木真仁だった。鈴木真仁の声が1時間ぶっ続けで聴ける時期があったのだ。ただし、アメリアは原作の第一巻に相当するエピソードが終わった後の登場だったから、ほぼ1か月程度だったが。アメリアは白魔術系のキャラのはずだが、英雄叙事詩オタクで、正義感が過剰すぎる破壊的な王女様だった。プリンセスであることや、「悪意のない破壊的なキャラ」という点で(アニメの)チャチャに共通するところも多い。鈴木真仁の、硬質で「濁点」ぎみの声が非常に似合っていた。

 原作のアメリアは、すぐにリナの仲間になって気やすく会話するようになるが、アニメ版では最後までリナを「リナさん」と呼び、「です、ます」調で話しつづけた。その硬さというか力みかげんが鈴木真仁の「濁点」声に似合っていたように思う。伝え聞いたところでは、『スレイヤーズ』に鈴木真仁が出ると聞いたとき、配役はアメリア以外にあり得ないと言ったファンがいたらしい。

 私のなかでは、『チャチャ』(アニメ)の第30話や第49〜50話を除いてあまり性格を描かれることのなかったマジカルプリンセス(大チャチャ)の性格にこのアメリアの性格が侵入して記憶されていて、分離するのに苦労しているところである。


『バウンティ・ソード』

 ゲーム『バウンティ・ソード』は、『チャチャ』に参加していた脚本家の山口宏(現在は『ケロロ軍曹』の脚本などで活躍している。なんか山口脚本の回は「モアちゃん率」が高い気がする。たぶん気のせいではないと思う)が監督して一九九五年に発売された任天堂スーパーファミコン用のゲームである。この作品のラジオドラマ『鋼鉄の龍』で王女フュリスを演じたのがチャチャ役の鈴木真仁である。これもまたプリンセス役だ。でも、わがままで無愛想で、チャチャやアメリアとはまったく違った役どころだった。お鈴ちゃん役の並木のり子も出演している。こちらはほわほわした声のお鈴ちゃん役とは違って硬い無表情な声で演技していた。他の登場人物は、主人公ソードが石塚運昇、「虫みたいな」妖精(?)フュリスが三石琴乃、他に、関智一、篠原恵美など。なお、並木のり子が演じていたロベリアは『鋼鉄の龍』にしか登場しないドラマだけのオリジナルキャラである。

 鈴木真仁はこのドラマのテーマ曲「遠い記憶」も歌っていた。幻想的でふんわりしたいい曲である(作詞は山口宏)。ゲームにはキャラクターの声は入っていないが、フュリスのセリフは鈴木真仁が声をあてていると思って音声を補って読めばおもしろい。また、フュリスのセリフ以外でも『チャチャ』ファンには見覚えのあるセリフが出てきたりする。

 私は『バウンティ・ソード』を文字どおり寝食を忘れて一週間ぶっ続けにプレイして、聖女ミランダのすべてのパラメーターを振り切らせてしまったこともある。ミランダは「体が弱い」という設定のはずなのに、最後には最後の敵キャラより強くなっていた。もちろん主人公のソードより強い。強敵であるはずの「機神」すら杖で3回殴っただけでやっつけてしまったことがある。

 なお、ゲーム『バウンティ・ソード』は、後に『バウンティソード・ファースト』としてプレイステーション用に発売された。このヴァージョンではクリアしなければならないマップの数が減ったかわりに、特殊なイベントの起こるマップが増え、マップ一枚ごとのクリアが難しくなった。魔法使いの少女エルマ(まあ「マリンちゃんみたいなキャラ」である)などプレイステーション版にしか登場しない魅力的なキャラもいるが、私は全体に「荒削り」な感じのするスーパーファミコン版のほうが好きだ。ミランダが強くなりすぎる件も問題にされたらしく、PS版ではミランダがあまり強くならないように作られていた。

 山口宏は『バウンティソード』シリーズにつづけて高度成長時代の日本を舞台にしたゲーム『ゲートキーパーズ』を作る(アニメ版も2シリーズ作った)。ここでも物語の鍵を握る少女北条雪乃を鈴木真仁が演じている。