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― 『赤ずきんチャチャ』のページ ―

清瀬 六朗


『赤ずきんチャチャ』とその周辺

― 2. ―

原宿駅のチャチャ

 原宿駅の明治神宮やNHKに近い側の改札を出てすぐのところに代々木アニメーション学院(鈴木真仁、並木のり子らの出身校)の看板があって、そこにチャチャ(小チャチャ)の絵が出ていた。魔法で何かを出そうとしている(「出でよ! ○○!」)ポーズだったと思う。

 私は月に一度ぐらい原宿に行っていた時期がある。21世紀に入ってからのことだから、『チャチャ』放映終了から5年くらいは経っていた。私は、改札を通るたびに、色のあせかけたチャチャの絵を見上げて、この変化の激しい世のなかでそれでもチャチャがここでまだ笑顔でがんばっているのに何かほっとしていた。帰りには、「次に来たときにはもうチャチャはいないかも」といつも思って、改札を通ってからチャチャのほうを振り返っていた。でも、私が、月に一度、その改札を通っていた時期にはチャチャの絵はなくなることはなかった。

 それからしばらく原宿に行く機会がないままで過ごし、今年(2004年)の夏に久しぶりに行ってみた。看板は掛け替えられていてチャチャの絵はなくなっていた。放映開始からもう一〇年経つのだから当然と言えば当然だが、さびしく感じたのはやはり確かだ。パレフランスがなくなっていたのにも驚いたけど……。


辻 初樹監督

 『チャチャ』と同じスタジオぎゃろっぷ制作のNHKアニメに『アニメ三銃士』があった。後番組が最晩年の手塚治虫が原作の『青いブリンク』、そしてその後がガイナックスの庵野秀明監督の『不思議の海のナディア』だったと思う。

 私は『チャチャ』関係ではこの作品で日のり子と辻初樹の名まえを覚えた。平野文、田中秀幸らの名まえを覚えたのもこの作品だ。それまでこれらのスタッフや声優が参加する作品を観ていなかったわけではない。私がスタッフやキャストの名まえを意識して作品を観るようになったのがこのころからなのだ。それまでは、何度も見ているうちに主要な配役を覚えてしまうことはあったが、それを意識して観ることはなかった。まして、絵コンテ・演出・作画監督など、何をやる役割なのかさえ知らなかった。

 日(当時は「日高」)のり子は主人公ダルタニャン(松田辰也、先行放映版では古川登志夫)の恋人のコンスタンス役だったが、アニメ版で「男装の麗人」に設定されたアラミス(山田栄子)や妖女ミレディー(平野文だっちゃ)の陰に隠れて、出番は多いもののあまり目立たない損な役回り役になってしまった。ただし、原作のような悲劇的な役回りでないので、その点は救われているかも知れない。辻監督はこの作品ではキャラクターデザインと作画監督のみの担当で、まだ演出は担当していない。

 その後、辻監督は『チャチャ』の前番組『姫ちゃんのリボン』の監督を務める。『チャチャ』では辻監督は再編集話とOVA以外では最初と最後しか自ら演出していないが、『姫ちゃん』では各話演出も一一話担当している(再編集話、絵コンテのみの話数も含む)。なお、桜井弘明(絵コンテ・演出)‐音地正行(作画監督)組は『姫ちゃん』では最終話を含む10話を担当していた。鈴谷 了さんがこんどの『WWF No.13 2004年新編集版』の「一〇年目のあとがき」に書いておられるように、『姫ちゃん』には大地丙太郎・佐藤竜雄は参加していない。


音響監督たなかかずや

 『ギャラクシーエンジェル』(GA。アニメ版、第一シリーズ)で最初に新谷良子の演じるミルフィーユ・桜葉の声を聴いたとき、私は『チャチャ』を初めて観たときの感覚を思い起こした。声質や初々しさがどこか『チャチャ』初期の鈴木真仁を思い起こさせたのだろう。

 エンジェル隊基地が墜落したり、登場人物がサルになったままオチなしで終わったりして、次の話はそんなことはなかったごとくに始まるGAの世界観は、『うる星やつら』に較べられることがある。これはそのとおりなのだけれども、もう一つ私が似ていると思った作品が『チャチャ』だった。『チャチャ』ではあんがい世界の連続性は保たれていたけれど、「何でもあり」の世界観が似ているように感じたのだ。

 GAの主人公たちは仲のいい仲間どうしなのに互いに命を狙い合う「万人の万人に対する闘争」的な世界観や、キャラクター一人ひとりがどんな場面でもそれぞれ自分の世界をもって行動しているような描きかた、それに作品の「空気感」のようなものが『チャチャ』と共通しているように感じたのだ。GA(アニメ版)の世界も、壊すことや命を狙うことが「生きた世界」に属している証しになる荒ぶる世界なのだ。同じブロッコリーアニメの『デ・ジ・キャラット』は『チャチャ』で戦っていた演出家の桜井弘明の監督作品だが、GAには参加していない。まさか『カードキャプターさくら』のメインスタッフがこういうのーてんきおバカ作品を作るとは思わなかった。

 『チャチャ』もGAも音響監督はたなかかずや(田中一也)が務めている。『ぴたテン』や『十兵衛ちゃん』(第一、第二シリーズとも)も同じだ(現在は『スクールランブル』かな)。これらの作品に共通しているのは、どんなにシリアスな場面でも失われない底に流れる世界の奇妙さ(というより「ヘン」さ)・滑稽さの感覚だと私は思う。その世界観を作り出す上で、たなかかずやの音響演出の役割はけっして小さくないと思う。ちなみにGAには一話だけやっこちゃんの赤土`眞弓がゲスト出演している。

 個人的には、「本来の視聴者」として『赤ずきんチャチャ』を観ていた沢城みゆきが『チャチャ』の音響監督の音響演出でGAや『ぴたテン』に出演しているのを観ると感無量だったりするのですが。まあたんに沢城みゆきのファンなんですけど。