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VOL020-引当金  番外編4

引当金、耳慣れない言葉でしょうか?でもよく話題に上るテーマですし、企業会計という分野では避けて通ることのできない概念ですので、解説していきましょう。まずは、企業会計原則という、現在の日本における企業会計の基本を定めた文書に定義がありますので、ご披露してみましょう。

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。(企業会計原則注解18)

何だ、こりゃ。

要約すると、引当金を計上できる場合とは、

条件1:将来の特定の費用又は損失(つまり、当期においてはまだ費用や損失の発生は無い)であること。

条件2:その発生が当期以前の事象に起因するものであること。

条件3:その発生の可能性が高い(低いのはダメということです)こと。

条件4:その費用又は損失の金額を合理的に見積もることができること。

の全てを満たす場合、ということになります。

既に費用や損失が発生しているものだけを、その発生した会計期間に計上するのが原則です。しかし、この引当金は、費用収益対応の原則(VOL019をご参照下さい)に基づく、いわば、「例外(将来の費用又は損失ですから)」ということです。「例外」だからこそ、これ程いろいろな条件付けをしているのだということだと思います。

この条件を満たした場合には、当期の負担に属する額を損益計算書上に費用又は損失として計上し、引当金の残高は貸借対照表に計上されます。

引当金の例としては、製品保証引当金、賞与引当金、退職給与引当金、特別修繕引当金、貸倒引当金などが主なものです。

前回、VOL019でご紹介した、機械の話は、特別修繕引当金(この例のように、定期的な大修繕を行う場合に備えるものです)に該当します。具体的な数字で説明しましょう。設例については前回をご覧下さい。

    1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 合計
売上高 A 100 100 100 100 100 500
修繕費用 B 100 100
利益 A-B 100 100 100 100 400

引当金を設定しない場合は、このようになりますね。では、引当金を設定した場合はどうなるでしょう。

    1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 合計
売上高 A 100 100 100 100 100 500
修繕費用 B 100 100
引当金繰入額 C 20 20 20 20 −80
利益 A-B-C 80 80 80 80 80 400

5年間を一つの単位として考えると、つまり5年間の合計は、引当金を設定してもしなくても同額になりますね。しかし、各年度の利益額は異なっています。1年目も2年目も、同じように機械を使って製造販売活動を行っているのだから、それぞれの年度に負担させよう、という趣旨、なんとなーく、わかっていただけましたか?是非、もう一度、上に上げた条件と、この設定とを見比べてみて下さい。この設例は引当金の条件に当てはまっていますよね?

さて、下の表の5年目、引当金繰入額が−80となっていることに気が付かれたと思います。この特別修繕引当金の場合も、上述のとおり、引当金繰入額は損益計算書上の費用となり、その額は同時に貸借対照表の負債に計上され、累積されていきます。1年目は20、2年目は40(20+20)、3年目は60(20+20+20)、そして4年目には80の引当金残高が貸借対照表に計上されています。これを実際に費用が計上された年度に「取り崩す」のです。この取り崩し額は、損益計算書上で収益に計上され、貸借対照表上の引当金残高は0になります。つまり、5年目においては、5年分の費用(100)が一度に計上される(実際に修繕工事を行ったのでその費用が計上されるということです)と同時に、4年間分の引当金の取り崩しである収益(80)が計上されるため、結果的に、1年分(費用100と収益80の差額である20)だけを負担することになります。

 

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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