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お母さんのための

日経新聞入門講座

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VOL022-損益分岐点  番外編5

前回、「価格が下がり販売数量は減少しているから、企業の利益が減る」と言いました。

販売単価×販売数量=売上高ですね。売上が減ると利益が減る、何となくイメージが湧きますよね。そのイメージをもう少し拡張してみましょう。

商品や製品を販売するためにかかる様々な費用は、その性質によって大きく二つに分けることができます。固定費と変動費という分類です。固定費とは、売上高の多少に関わらず、発生する費用です。一方の変動費というのは、売上高に比例(売上高が増えれば増えるし、売上高が減れば減る)して発生する費用です。

例えば、デパートを思い浮かべて下さい。デパートの店舗にはクーラーや蛍光灯が必要です。お客さんが少ないとか、売上が落ちているから、と言って、クーラーを止めたり電気を消したりすることはできませんよね。多少クーラーの温度を上げたり下げたり、ワット数の小さい蛍光灯に変えたりすることはできるかも知れませんが、売上高とは比例関係にありません。こういうものが固定費です。

一方、変動費と言えば、デパートの商品の仕入代金がその典型です(もちろん、たくさん仕入れると値引きがあったりしますが、大まかに考えて下さい)。デパートの包み紙や紙袋なんかもそうですね。たくさん売れればたくさんかかる費用です。

このデパートでは、1個100円で仕入れた商品(変動費)だけを1個120円で販売していると仮定します(ちょっと現実味が無いですが、わかりやすくするためですから)。デパートの電気代(固定費)は1ヶ月に300円かかるとしましょう。

ある月、30個売れたとします。そうすると売上高は3,600(120円×30個)円、変動費は3,000(100円×30個)円、固定費が300円です。そうするとこのデパートの利益は300(3,600−3,000−300)円となります。

次の月は10個売れました。売上高は1,200円、変動費は1,000円、固定費は300円ですから、利益は△100円です。あら、赤字になっちゃいました。

赤字にしないためには、いくつ売ればいいのでしょう?方程式を使って解いてみましょうか。販売個数をYとしましょう。赤字にならないためには、売上高から費用の総額(変動費+固定費)を差し引きした金額が0円であればいいのですから、120Y−(100Y+300)=0となりますね。この方程式を解くと、Y=15となりますから、15個売れれば損益0となります。この時の売上高1,800(120円×15個)円が損益分岐点です。つまり、このデパートの場合、売上高が1,800円を超えれば黒字、1,800円に届かなければ赤字になります。つまり、企業の赤字と黒字を分ける売上高のことを損益分岐点と言うのです。

変動費しか発生しないと仮定すれば、どんなに売れなくても利益が0になるだけで、赤字にはなりません。しかし、固定費があると、固定費分は赤字になる可能性があります。利益が0でも企業は倒産しません(儲けが無いというだけで、仕入れた商品の代金も電気代もちゃんと支払ができます)が赤字が大きくなれば倒産してしまうことになります。固定費の発生しない企業は無いですから、この点において、売上高が減少すると利益が減少するという事実が深刻な問題となります。固定費を如何に抑えるか、が企業にとって死活問題となります。

また、設備投資よって発生する減価償却費(これもまた後日とりあげます)は固定費の典型ですし、人件費も固定費です(一旦従業員として雇用したら、売上が落ちたからと言ってすぐに解雇したり、お給料を下げたりはできませんよね)。だから、不況下にある企業は、設備投資を抑制したり、リストラを行って従業員数を減らしたりして、固定費を削減しようとしているのです。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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