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お母さんのための

日経新聞入門講座

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VOL040-会計制度の変更2・資本コスト 1999/MAY/14 朝刊31面「日本企業の変革本番へ」

是非、古新聞をひっくり返してでも、読んでいただきたいと思い、取り急ぎご紹介します。一橋大学の伊東教授がお書きになった一文です。

経済教室というここの論議は、いつもかなり難しいというか専門的なお話が多くて、私もよくすっ飛ばしているんですが、この一文は非常にわかりやすいし、会計制度の変更に伴う問題、あるいは現在の日本企業に横たわる問題が的確に、簡潔に説明されているので、大変勉強になります。

取り上げられているのは、連結、時価会計、税効果、年金など、ここで何度かお話させていただいたトピックスですので、少しは気楽に読んでいただけるのではないか、と思うのですが、いかがでしょうか。

是非、本文を読んでいただきたいのですが、ポイントをまとめておきます。

今回の会計制度の変更の背景となっているのは、日本版ビックバン(金融大改革)、市場原理へ移行と、企業のグローバル化に伴う国際会計基準への世界的な潮流で、この会計制度の変更が、日本の企業システムそのものに変革をもたらす潜在力を持っている。

例えば、連結決算を中心とする開示制度の導入により、企業は「グループ連結経営」に注力せざるを得なくなり、グループ全体の企業価値を考えた上で子会社の整理・統合を行う必要が出てくるため、事業の「選択と集中」が本格化することになる。

時価主義会計への移行により、「資本コスト」意識を持たざるを得ず、資産効率を高める必要に迫られることになる。持ち合い株式の解消、M&A(企業の合併・買収)が促進され、連結会計とともに事業の「選択と集中」が加速される。

当年度から適用し始めた企業の多い税効果会計は、財務会計と税務会計との乖離の進展、金融機関の不良債権償却の促進などを背景として導入された。税効果会計特有の会計処理の内容(繰延税金資産の資産性等)について留意すべき点もあるが、欠損金の繰延処理を通じてリストラが促進される効果もあることに注目したい。

年金債務の貸借対照表への計上(オンバランス化)により、確定給付型年金への移行が促進されるであろうし、年金債務という労働債権に対する従業員の関心の高まりが、労使間の緊張関係をもたらし、従来のような従業員と企業(経営者)が一体感を醸成しながら、経営を協調的に行う日本型の経営を難しくするだろう。

今回の会計制度の変更に対応した新たな経営や労使関係のモデル構築が迫られているのである。

 

いかがでしたか?少し取っつきにくかったかも知れませんが、基本的には今までここでご説明してきた内容の延長線にあるお話ですので、おわかりいただけたのではないか、と思うのですが。

資本コストという言葉は初めて出てきたと思いますので少しご説明しておきます。資本コストとは、資本の調達費用という意味です。

企業の資本(経営するにあたっての元手となる資金)の調達は、借入金、社債、株式のいずれかによります。例えば、株式を発行してその代金を元手にするとか、銀行から借入をした資金を元手にするとか。その株式を発行して得た代金や借り入れした資金を使って、企業は資産を取得します(逆に言えば、企業の持つ資金は元を正せば、借入金か社債か株式のいずれかなのです)が、借入金にしても、社債、株式にしても、その調達に当たってはコスト(費用)がかかっています。例えば、借入金や社債なら利息を支払わなくてはなりませんし、株式なら配当を支払わなくてはなりません。このコストのことを資本コストと言います。

そして、資本コスト意識とは、資産の取得(例えば他社株式の購入や土地の購入など)あるいは保有に際し、資本コストと、その資本を元手に取得した資産によって獲得する利益との比較を行って決定すること、あるいは、比較する意識を持っていること、ということになると思います。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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