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お母さんのための

日経新聞入門講座

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VOL061-リスクマネジメント(risk management) 番外編18

最近、食品業界で様々な事件が起きていますね。これらは製造工程の管理ミスが原因ということが多いようですが、一方、製薬会社では異物が混入され、脅迫されるという事件が起きています。自社のミスにしても、第三者が引き起こした事件に巻き込まれたにしても、企業の存亡にかかわるリスク(危険、危機)という意味では共通していますね。

私たち個人の生活にも、企業の事業活動にも、必ずリスクは存在します。企業はこのようなリスクに対処する術を持っていないのでしょうか?お母さんは、自分や家族が病気になったり、家が火事になったり、泥棒に入られたり、そんな家庭のリスクに対してどのように対処しているでしょう?そう、保険をかけていますね。企業にしても、個人にしても、保険というリスクに対する対処法が一般的です。宇宙に打ち上げるロケットにも保険がかけられていると言いますから、保険がカバーする範囲はとても広いです。

が、しかし、闇雲に保険をかければ良いか、というと、そんなことはないと思います。考えられる限りのリスクに対して保険をかけていたら、恐らく、お母さんも企業も破産してしまうでしょう。お母さんにとって、あるいは企業にとって、どんなリスクが存在しているのか、そして、そのリスクが現実のものとなった場合に、どれだけの費用や損失が発生するのか、そのリスクを回避する方法(例えば、泥棒に入られるというリスクなら、番犬を飼うとか、警備会社と契約するとか、鍵を厳重なものに替えるとか)が無いのかどうか、またその方法にはどのくらいの費用がかかるのか・・・、そんなことを考えることが、とても大切です。

こんな場合に役に立つのが、リスクマネジメント(危機管理)という考え方です。日本経済新聞社編「経済新語辞典2000/2001年版」で意味を確認してみましょう。

「リスクを予想し,リスクが現実のものになってもその影響を最小限に抑えるように工夫すること。1950年代半ばにアメリカで保険理論の1分野として展開されたのが始まり。わが国でも企業活動の国際化や多角化に伴って関心が高まっている。
 一般にはリスクの発見,確認から始め,そのリスクの頻度と企業財務の安定性に与える影響を測定,リスク・マトリックスを作る。それぞれのリスクの処理方法を多面的に検討しておき,費用と効果を勘案して最適な処理法を選択する仕組み。」

上の説明は、リスクが発生した場合の影響について、企業財務の安定性(簡単に言ってしまえば、多額の費用が必要かどうかということです)に与える影響だけを取り上げていますが、企業のブランドとかイメージとか信用など、お金の価値に換算しにくいものに対する影響についても十分に考慮する必要があると思います。お金なら工面できる可能性はありますが、企業自身に責任があるかないかに関わらず、一度失われてしまった信用はなかなか回復できないものだということは、行政のミスによりO-157の疑いをかけられてしまった食品会社の例などが証明済みですね。お母さんも思い出の品など、いくらお金を積まれてもかけがえのないものをお持ちですよね。

ちなみにマトリックスとは、表をイメージして下さい。発見したリスクとその頻度、企業財務に与える影響を表にしたものを作るという感じです。

さらに企業の場合は、顧客などに対して、リスク発生を把握した時点から、どの段階でどのようにその情報を開示するか、という問題もとても重要です。いかに適時に適切に情報を開示するか、というのは現代の企業にとっては最重要課題の一つです。

リスクにいかに対処するか、あるいはどのように情報を開示するか、というような問題は、リスクが発生してから考えるのでは、恐らく間に合いません。パニックを起こし、右往左往しているうちに時間だけが経過していくという結果になる可能性が大きいです。情報開示の遅れは、隠蔽していた、と解釈される可能性が高くなりますから、まさに、覆水盆に返らずです。重大なリスクや発生の可能性の高いリスクなどについては、少なくとも前もってシナリオ(脚本:こんな事態が起きたらこう行動するというパターンをいくつか描いておくもの)を描いておく必要があります。大震災などに備えて、近所の避難所を確認したり、いざという場合に家族がどこで落ち合うかを話し合う必要があるのと、全く同じ理由ですね。もちろん予行演習を行えればそれに越したことはありません。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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