Ani_002.gif (31587 バイト)

お母さんのための

日経新聞入門講座

Lin_104.jpg (3585 バイト)

VOL062-単式簿記と複式簿記 番外編19

日頃お世話になっている佐藤さんが、簿記の勉強を開始されたと伺いました。まだ、簿記については取り上げておりませんでしたので、今回はこのテーマでお話したいと思います。

簿記。これは「帳簿記入」の略語がその語源だと聞いた記憶があります。つまり、帳簿に記入すること自体を示しているのであって、帳簿への記入の仕方は述べていません。

簿記には、単式簿記と複式簿記という2種類があります。単式、複式という言葉はいずれも帳簿の記入の方法を示しています。単式簿記は、国や地方自治体などで採用されている方法ですが、お母さんがつけておられる家計簿や子供のお小遣い帳も単式簿記によって作成されています。一方、企業では複式簿記によって帳簿が作成されています。それゆえ、一般的に簿記と言うと、複式簿記をイメージする場合が多いようです。

単式簿記と複式簿記、どのように違うのでしょうか?お母さんの家計簿で考えてみましょう。例えば、2千円分の食料品を買ってきたとすると、出金欄に2千円と記入することになりますね。つまり、現金が減少したことだけが記載されることになります。では、複式簿記だとどうなるでしょう?複式簿記の場合、帳簿には、現金が2千円減少したということと食料品が2千円分増えた(買ったということは手元の食料品が増えたと言うことになりますね)ということが記載されます。つまり、複式簿記の方が同じ取引について帳簿に記載される情報量が多い、ということになります。

同じじゃない〜?いえいえ、同じではありません。家計簿には、現金が出ていったという事実は記載されますが、それが食料品を買ったからなのか、エプロンを買ったからなのか、ということは記載されていないのです。これは家計簿の目的から考えるとおわかりいただけると思います。家計簿の目的は、日々の家計のやりくりを記載するためにあるわけで、お母さんのお財布の中にいくらあるか、を管理するための帳簿です。従って、家計簿では、2千円の現金が出ていき、現在財布の中にいくらあるのかが明かであれば、用が足りるということになります。

恐らくお母さんは2千円の出金を書いた欄の横に食料品などとメモ書きをなさると思うのですが、これはあくまでメモ書きであって、帳簿の仕組み自体とは無関係なのです。もし、家計簿(つまり単式簿記)で食料品の購入まで帳簿上で管理しようとすると、また別個に、食料品についての帳簿を作成しなくてはなりません。最近では、お財布の中のお金だけを管理するのでは、家計簿としての目的を果たさない(今の時代、銀行口座や株式などの資産も合わせた管理が必要ですね)として、複式簿記に近い形式の家計簿も販売されています。

さて、では、企業では情報量のより多い、複式簿記を採用しているのに、国などでは単式簿記を採用している理由は何でしょう?今までの説明でもおわかりいただけたかと思いますが、その目的が違うからだと考えられます。国や地方公共団体などは、議会で承認を得た予算をきちんと執行することがその重要な責務です。その執行具合を見るには、単式簿記が適していると考えられてきたのです。過去形で「考えられてきた」と表現したのは、最近、国や地方公共団体の作成する帳簿が今のままで良いかどうか、議論が起きているからです。上でも述べましたが、単式簿記による帳簿からでは、読みとれない情報が多くあるので、複式簿記に変えるべきではないか、という指摘がなされています(VOL049-国の貸借対照表をご参照下さい)。

勉強を開始された佐藤さんとそのお仲間の皆様のご健闘を心よりお祈りしております♪

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

BACK   NEXT    TOP    HOME