カギの問題(1996.11.6)

カギの問題(1996.11.6)



 批評などの文章を書くとき、「」『』〈〉《》【】をどう使い分けるかを迷って、自分なりに決めたことがある。「」と『』は間接話法またはその内部で頻繁に使われる記号である。だから引用部分を示す場合はこれ以外ということになる。すると《》か〈〉か【】であるが、わりに《》は引用に使われているのを見る。僕もこれにした。文学作品を引用するときにその出典は明確にしなければならない。そこで、書名、雑誌名、作品名の区別の必要が出てくる。とくに表題作という場合の書名と作品名が同じ場合、読者は混同する恐れがある。実際そういう文章の例はよく見る。それで、書名を『』(これは一般的である)、雑誌名を「」、作品名を残った〈〉にした。これでほぼ大丈夫なのだが、〈〉が作品名を示すことを異様に感じる人もいる。どうしてもこの3つの区別を明確にしたいのだが、『』「」以外を使うこと、引用以外はどうも馴染みがないらしい。そこで、まあ類推してください、というふうにあきらめて、作品名を「」でくくり、強調なども「」、間接話法も「」とすることになる。まあ、一括して印刷する機会があったら綿密に僕の作った凡例通りに直す予定ではある。
“”は横組みだといいが縦組みにするとおかしくなるし、縦組み用のは自分で作らなければならない。これは日本語だと強調に頻繁に使われるが、文字コードにはない。これは文字コードの欠点だと思う。文字コードにない字を挙げたらきりがないが、少なくとも“”の縦組み用のものがあれば、ほとんど不満はない。ない字を使うのはローカルでやれば十分ぐらいの頻度だから。【】や{}[]などに手をのばすともうきりがなくなるし、ふつうの文章では一般的でない記号なので使わない。
 先週文章を書いていて、作品名に〈〉が使われているのに遭遇した。そうすると〈〈ほにゃらら〉〉という具合になってしまう。しかし題名に「」が使われている場合、もし作品名に「」を使っていれば当然「「ほにゃらら」」となって同じようになる。でも〈〈ほにゃらら〉〉となる場合のほうがよほど少ないだろう。
 というふうにいろいろ悩んでみても、しょうがない問題かもしれませんね。

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