高所恐怖症なので、吹きさらしのビルの屋上なんかは苦手なのだが、はめ殺しのガラス窓を通して俯瞰するというのは気持ちがいい。
昨年三軒茶屋にキャロットタワーというのができて、最上階にレストランがある。そこから夜の街をデジタルカメラで撮って、魚眼に処理したのがこの写真である。
「A列車で行こう」というゲームはさんざん楽しんだ。街の発展が景気や人口移動量で変わってくる。鉄道マニアではないから、綿密にダイヤを作ったりしないで、夜中もどんどん電車が走っているようになってしまうが、株で儲けるコツを覚えれば子会社は収益があがる。森や公園を作って快適な街になんて考えているとだめなこともわかる、とても資本主義的なゲームである。しかし、このシミュレーションをよく見ていると、線形的な論理が支配しているのがわかる。もっと街は複雑に生成されていくと思ったりした。またこのゲームには箱庭療法のような、一種のセラピーの要素もあると思う。
キャロットタワーのレストランは純粋な商業資本の経営ではないらしいが、環状線から少し離れたところに、ぽつんぽつんと東京を俯瞰できるビルがこれから建っていくことは確実だろう。この辺でいえば、ついこのあいだまでは、恋人たちは多摩川の河川敷を歩くことがひとつの定番のデートコースだったろうが、このビルの最上階はまた新しい思い出作りの場所になる。
遠くに来たものだ、と思える。東京に来て30年も経ってようやく東京のにおいが体に染みつくような感じが、冬の夜景を見ていてしてきたのだった。