複雑系――その4(1997.3.15)

複雑系――その4(1997.3.15)




『パソコンで見る複雑系・カオス・量子』(講談社ブルーバックス)には、CD-ROMが付いていて楽しめる。プログラムは、カオス水車、スペースシャトルの中のペンチ、ナノスペースを探る、心臓の拍動のリズム、メダカの学校、アリジゴクの巣穴、の6つである。複雑系に関連したプログラムとして、メダカの学校の映像を引用してみた。
 魚の集団遊泳については、東京大学海洋研究所の青木やマイアミ大学のパートリッジなどの学者が研究してきた、とこの本にある。いくつかのポイントがある。
 なぜ群れるのか? 群れを作ると食べられる危険性が低下する。大勢で見ているので、捕食者の接近に早く気づく、目まぐるしく動くことにより捕食者を混乱させる。これは個体にとって、緊張感の節約になる。
 群知能はあるのか? この本ではシャチやカマスやマグロの捕食行動を例に挙げて、集団があたかも知能を持っているかのように統一行動を起こすことが書かれている。シャチは餌となるニシンやサケの大群を追うとき、包囲し、包囲網がある程度まで達すると、群れは二手に分かれ、一方は包囲しを続け、一方は餌の大群に突入し、餌の群れを四散させる。四散して茫然と泳ぐ群れが崩れた個体をシャチは捕らえる。このプログラムでは、メダカの行動のシミュレーションの計算を6つにわけている。シミュレーションのなかで、外乱における四散の効果、というのを選んでみた。このプログラムで外乱の尺度が8の水準で四散が、一つの群れに戻れるか戻れなくなるかの臨界のようだ、と書いてあるので、8でシミュレーションし、外乱を与えた直後の映像である。赤のグラフは魚群の空間的広がりの推移であり、緑のグラフは黄色の魚の運動方向のばらつきの推移を示す。プログラムの各数式は本に、CプログラムのソースはCD-ROMに収められている。
 単純に言って、このシミュレーション映像から思い出せるのは幼いころの川遊びである。小魚の群れに石を投げたときの、群れの散る姿が浮かんでくる。これは6つの系を行動様式に与えれば再現できるのである。
 外乱は3回あたえた。
 アリジゴクのシミュレーションも複雑系の例であり、とてもおもしろかった。


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