素晴らしい喫茶店(1997.8.8)

素晴らしい喫茶店(1997.8.8)



 この「連続コラム」もここのところ、途切れがちで反響mailを下さる方には失礼している。この夏痛感するのは、いかに詩とは無縁の生活をしている人が多いかということだった。こういうと不遜のようだが、詩とは僕にはとても必要なのであり、生活にも十分関係がある。かといって、年中詩を書いているわけにもいかないし、普通、書かないで生活している人がいるというのも当たり前なのだが、不思議なのである。たぶん何かの欠損が僕にあり、それを埋めるために書いているのだろうか。ひとまずはそのように考えてしまう。
 昨日、いろいろとやらなければならないこと、判断しなければならないことがひとまず決着がついて、夫婦と犬で散歩に出た。蒸し暑い日が続く。僕らはいつもと違うコースをとった。方角でいえば南西である。イヌマキの木がある角を曲がると今まで気づかなかった喫茶店があった。それは植木を植えた造園業者の土地の横にあり、入口にはいま流行りのガーデニング製品を置いてある。そして、セントバーナードをゴールデンレトリバーが店内にいた。店内といっても半分野外である。二匹はとてもおとなしく、ウチの犬ともすぐ親しくなった。犬をいれていい喫茶店である。テーブルには虫よけスプレーが置いてある。犬はすぐにコーヒーを飲む僕たちの横で伏せの姿勢でリラックスしているようだった。
 僕は『風に乗ってきたメアリー・ポピンズ』が男友達とたしか木いちごの何かを食べている場面を思い起こした。ふとした人事の合間、僕らは素晴らしい喫茶店に遭遇して疲れを癒された、という感じである。名前はたしか「ルッキング スルー」だったと思う。いつか、この文章を読んでいてくださる方を誘ってみたい喫茶店である。たぶん、それは実現するだろう。こういうことが詩を書くこととは何も関係ない、とはいえない。たぶん、誰でも突然遭遇した素晴らしい喫茶店に癒されることがあると思うから。

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