拾い猫雑記 その3(1997.11.12)

拾い猫雑記 その3(1997.11.12)



 カオスは、次第に子猫を守るふうな様子を見せることがあるようになってきた。
 テーブルの上だけには上がらせないように躾けているのだが、首のところを持ち上げて「だめ!」と怒ると「うー」と唸ることがある。「ベルを怒るのはもうやめてください」と言いたげなのである。ベルは、毛足の長いシェルティの足の毛を猫じゃらしのようにして遊ぶことがある。カオスは静観しているか、もしくはあまりにしつこいと小さな足を大きな口で甘噛みする。ベルも心得たもので、カオスが怒るとしばらくはおとなしくしていて、またしっぽなどの毛で遊ぶ。カオスは群れを監視する本能があるような気がする。この家のボスは明らかに妻である。ベルのような赤ん坊の新参者に対しては、本能的にスムーズに受け入れる態勢ができているのだろう。群れで行動する犬族にとって、家族が留守のような孤独のときは苦しいものなのらしい。ベルが来てから多少は癒されたのだと思う。
 どうも子猫の生活には、腹いっぱいになると遊び、日が心地よい午前は主に昼寝、寝る前にはひとしきり遊び、というようなリズムがあるようである。いままでほとんど猫には飼おうというような興味がなかったのだが、飼ってみると詩には書きやすい動物だと思われるようになった。犬の場合は『名犬ラッド』であり、『フランダースの犬』であり、『忠犬ハチ公』のイメージである。『吾輩は猫である』のような間接話法の要にも、イメージの瞬発力の彩りにもなりにくい。上の写真はようやく、潰れた片目から目やにがそれほど出なくなり、萎縮してしっかりした片目猫の風貌を持ち始めたベルである。


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