植物、動物 その3【リトープス】――1(1997.12.10)

植物、動物 その3【リトープス】――1(1997.12.10)



 植物を眺めているとうっとりするというのは前にも書いた。今頃でも小菊はまだ咲いている。幼いころ、三島の大社などで菊人形や、懸崖のように花を仕立てたり、糸のような花びらの菊を仕立てたのを何回か見たと思う。菊の花と同時に花の香りが数秒だろうが、うっとりとさせる。こちらの生理に触れるというのであろうか。
 伊豆の伊東にシャボテン公園というのがある。今は老いた母と一緒に行った場所で特に思い出に残っているもののひとつに、小学生のころこの植物園の大きな温室を回ったことがある。一枚の大きなサボテンの前に座った半ズボンの小学生の僕のピンぼけ写真を見るとそのときのことがありありと思い出される。どうも多肉植物やサボテンも、見ていると僕には特別にうっとりしてくる類のもののようで、だいぶ前のエッセイにも書いたが旅などで熱帯植物園があると必ず多肉植物の前で数秒たたずむ。かといって、これも前に書いたように熱心に世話をするというのでもないから、サボテンなら本の写真にあるメキシコの山の写真などを見飽きないで眺める。
 そういうわけで多肉植物の通販カタログなども取り寄せたりして楽しんだ時期もあったのだが、リトープスという小石のような植物は何回か買っていつも枯らしてしまった。ろくに栽培法なども調べずに、アフリカの砂漠の植物だから夏によく生長するのだろうと、盛んに水をやったのが間違いだったとわかったのはつい先日インターネットで多肉植物関係のHomePageを読んでからである。で、今年また冬の今生長する時期であるリトープスを購入した。今度は売っているおじさんに栽培法も聞いたが、「6月10日から9月20日までは絶対に水をやらないこと」と指南してくれた。冬の水やりについてはあまり気をつけずに表土が乾いたらやればいい、という。3鉢で500円と格安だった。これらは帝王とか、黄ビモンとか朱弦玉とか和風な名前がたいていついている。やはり、アフリカの砂漠に自生しているのであるから、コノフィツムとかメセン類とか、ハオルシアなどの異国の名前のほうがフィットするような気もするが、明治初期から愛好家がいたのだろうしそれが自然に残っているのかもしれない。
 枯れるかもしれないがこの冬、生育するように努力して脱皮(この植物は脱皮する)したり花が咲いたりしたらデジタルカメラで撮ってこのエッセイに載せようと思っている。

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