ロンさんとの文通 その1(1998.6.10)

ロンさんとの文通 その1(1998.6.10)



 外国語は避けて通ることができる。明治の初期と違って、日本にいるかぎり日本語で十分な教育を受けることができる。もちろん、高校や大学の受験のときには受かるために勉強することが必要であるが、外国語を流暢に話したり、書いたりすることは、日本語を使う同じ脳の部分、左脳を使うわけだから記憶容量的にいっても大変なことである。
 語学の天才といわれるハインリッヒ・シュリーマンは『古代への情熱』で、外国語習得のやり方をだいたい次のように書いていたと思う。まず使える言葉で、まとまった文章を書き、それを自分で習得したい外国語に自分で直し、ネーティブの人に添削してもらう。そしてそれを丸暗記する。
 シュリーマンは貿易の仕事を生業としていて、夢であるトロイの遺跡をついに見つけた人だが、もちろん商売の必要性からいろいろな言葉を覚え、さらにその言葉で綴られた文化遺産を享受することに成功する。初めになぜ外国語を習得する必要があるのかといったら、まず「商売」といってもいいのではないだろうか。外国の文学を味わうことはもちろん学校の外国語教育の延長に繋げていくことはできるし、現在たまたま国際語である英語やドイツ語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、中国語などの文献を読み書くために学者が習得することはある。しかし、それらも煎じ詰めていけば自分のサラリーに関係していくことも確かだ。
 インターネットではパソコンのコマンドも英語の略語だったりするし、情報科学の分野では多少英語がわかったほうがいいのは前からわかっていた。その先にできれば、異質の社会で生活する人々の実態を知りたいという好奇心が湧くままに英語に向かうことができるのがインターネットだ。この場合、受験などの実利とまったく関係ないところで、本来的な心の分野からのベクトルを最初に伸ばすことができるということだと思う。
 たまたま北岡明佳さんという方が、このホームページの掲示板で Ronald. H. Peat さんを紹介してくださり、一挙に英語版のホームページをつくって英語圏の方々とも交渉することを曲がりなりに実現しようとしている。すでにわかったことはロンさんは英語の詩について深い教養をもっていることである。
 おいおい書いていきたいが、すでに翻訳で知っていた好きな詩人のことなどを文通で少しずつ知ることができる。1バイトで表示できるアルファベットと2バイト必要な日本語文字、ということからいっても英語圏の方が日本語を理解することははるかに難しいことは初めから明白ではあるが、とりあえず1バイトのローマ字で日本語の意味を伝えることも始めた。Windows95 にも Macintosh にも日本語版はあるから、それを付加的にインストールしてもらえば、日本語を表示できるのであるが、とりあえずはこちらから十分接近してみることにした。
 英語の詩を媒介にして、今度は彼の生活の場面などを想像したり、画像をやりとりしてお互いの好奇心を満足させる。その第一歩を始めようとしているこのごろなのである。

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