このあいだ、新聞を読んでいたら、人間のミトコンドリアのDNA構成がほかの類人猿に比べて差異が少なく、これは一時人類が数万人までの数に大きな災害や殺し合いで減ったことを示しているのではないか、と仮説を立てていた。
DNAに関する本は楽しみに数冊読んだが、『分子レベルで見た体のはたらき』(講談社ブルーバックス)に付いているCD-ROMのDNAの立体模型を見ていると、もともと命とは「縮合」のイメージをもっていることが実感される。ただし、人間の心は生命と非生命の境界を意識し続けるから、ともすれば境界を超え出て向こう側(非生命)のほうへとイメージを伸ばすことはできる。
DNAポリメラーゼは生命科学や生命工学にとっては必須の酵素である。この酵素を使えば試験管の中でDNAを人工的に複製できるからである。(略)
まずDNAの情報がRNAに写し取られる。DNAをマスターデータとすると、RNAはそのコピーということになる。RNAはいわば仕様書のようなものである。RNAポリメラーゼはDNAの二重らせんを解き、その情報に基づき、RNA鎖を合成する。この過程を転写という。合成されたメッセンジャーRNAは文字どおり、DNAの情報を伝達する役目を持っている。(略)
RNAポリメラーゼの読み取り精度は、間違いが一万文字あたり一個である。DNAポリメラーゼに比べるとずいぶんといい加減であるが、RNAはタンパク質が必要となる時に随時DNAからコピーされる仕様書であるので、誤りがあっても実害が少ない。(上記の本より)