耳鼻科へ(1996.11.5)

耳鼻科へ(1996.11.5)


触角がふれた
コンビニの前の屑箱と
耳の奥の傷口と
重い図書館に
粘る静電気を残す

フィルムの書類に一字一字記し消し
軽トラックを避けながら
印を捺す一日の契約書

鳥の剥製が玄関にある耳鼻科
の受付の窓へ
漂いだす今日
地図を背景として
低音部が鳴る

ノイジーな街の音が
作る一種の白い顔
印象に罅いらせ
破片を集まらせ
長い顔の道化師が
その白い手袋に煙を差し出す
それは白くそして赤く
窓のほうへと続き
つぶてが
追い
耳の奥の傷に
情事が重なってくる
フィルムの罫線に

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(針を噴く指(1996.11.12))次頁(イワシの群れ(1996.10.29))

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