逆立つ髪(1996.12.3)

逆立つ髪(1996.12.3)


いたずらに花が揺れる
ささくれ立つ毛髪が
北や南また渦を巻き
花の像はコートに映る
その渦のままに
なんでそんなに焦れている
そんなに襟をたて
髪をつんつんさせながら
歩くのか
四角く凍り
それが丸く解けて
いつも路上に染みをつけるだけではないか

顔に当たるもの
それは棘でも真綿でもない
時空を形作ったものが焦れて
襟を立てさせる
いらいらと
脳をめぐり
蜜はなく
茫漠とした海浜に
クラゲのまぼろしが去っていく

コートに映る花むら
それは真っ赤なアザミである

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(豹(1996.12.10))次頁(靴の上の砂(1996.11.26))

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