チューブ(1996.12.17)
チューブの右に入ろうとすると
細かな棘があった
水澄ましはいない
では左は
わけもなく蠕動している
管は分岐していて
その膚を確かめて
進むことになっている
棘の向こうに
水辺の糸トンボが群れ
羽黒トンボも地面を這うように
飛んでいた
小さく見える
あれは魚眼のなかの
映像でも
いつでも回復の手だてがあると思う
排出口のほうへ動いている
管は孕んでいて
子プロセスが
数字を送っていた
じつは
糸トンボにも
神経が内壁にミクロンの単位で通じている
後ろから懐中時計がくる
鎖を
じゃらとさせて
「おーい」
誰もいないらしい
タバコに火をつけた
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