裂ける男(1996.12.24)

裂ける男(1996.12.24)


砂が風に交じる
バスが雲に埋没していく
姦しく清冽な
温室のガラスに
たわわに映す果実になって
まわりに
溶け出して
愛しい人は
タバコの吸い口に
紅を残し
バスに乗る

あでやかな帽子が
相模湾に飛んでいき
僕の肩の夜中
戻ってくる

水を背負った男よ
あなたは右のこめかみから
裂けて
祖の礎に
透明に
排泄する

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(白い耳(1996.12.31))次頁(チューブ(1996.12.17))

Shimirin's HomePageUrokocitySiteMap