断片(1997.1.7)

断片(1997.1.7)


雨戸を閉めなければ
灯油を撒く人もいるから
カーテンが燃える
床が燃える
布団のほうにも来る

ふと起きた夜中
住宅街は静まりかえっている

断片がしみじみと尽きてゆくね
あの地下の時代
それは財と同じくらい貧しいだろうか
尽きてゆくのは甘受していた曲がり角にいる
ピエロの眼が
小さな汚い箱に断片を収めたからだ
掘り返される群れ
昆虫や菌のように
小さな群れ

起きると夢は
光る床の上に消えている

たてがみを持って
夜中のコーヒーを啜る足下で
犬が見上げる
ゴースト
意味のない言葉を犬は聞いている

地上で尽きながら
断片は頭上に
ちらちらと増える

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(せつないヴィジョン(1997.1.14))次頁(白い耳(1996.12.31))

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