散歩のコース(1997.2.25)

散歩のコース(1997.2.25)


考えながら
天秤が揺れる
昼の月が片方に
ずれて
足が前にでる
濡れた鼻はすっかり定位されて
かすかな季節の移りを感じている
金網で囲まれた公園で放すと
子犬のころのようにはしゃいだ
見る目が哀れだ
そんなに信用している

そういえば北東の学校を回り
桃の花の咲く畑のそばを行き
信号を渡って歩くコースから
珍しくはずれた
おまえが子犬のころ
いつも駐車場を横切り
金魚屋の前を通って
そこから東にまっすぐ戻ってくる道
ふとその南西の方向に
歩いている
うらぶれたその方位
時計はそこに戻ってきたのかもしれない

辰巳
八犬伝の方位
ほとんどそちらには足を向けたことがない
北西は安らぎだ
あの方が年をとらないように真に望む方角

天秤が
少し水をこぼす
歩くコースを
おまえはこの影に沿って
楽しんでいる
ヒノキの上空の鎌のような雲が
こめかみを刺し

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(亀裂があいさつする(1997.3.5))次頁(ある駅の陰(1997.2.18))

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