亀裂があいさつする(1997.3.5)

亀裂があいさつする(1997.3.5)


雁字がらめにしばられ
包帯男が蹌踉として
歩いている
トイレットペーパーに十文字に巻かれ
ラッパ水仙に吸い込まれる
包帯男の群像

ぞろぞろ
花弁の細い道に沿い
紙を後ろに垂らして

黒いジャケットのポケットに水仙を
詰め込んで
地下鉄への階段を下りていく
昼の月の


いまテーブルの
皿の上の駅を
フォークでつまみ
駅の女の年齢を聞き
忘れてしまう数を
そのまま風に吹かせてしまう

亀裂が亀裂に出会うとき
霧吹きで互いを濡らす
あいさつをする街

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(芽キャベツ(1997.3.11))次頁(散歩のコース(1997.2.25))

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