トケイソウ(1997.6.3)

トケイソウ(1997.6.3)


一昨日
トケイソウの花が
5丁目の社宅のフェンスの蔓に咲いていた
今朝は写真に撮ろうと犬と出たのだが
時計の文字盤は花びらに丸くくるまれていた
寝ている花
まだこれらの花には虫が来ないか

すでに花アブはツツジに群れていた
背中から花粉を溜めた脚を
さすって挨拶したが
気にも止めずに次の花へいく
なぜトケイソウはそれなのに
閉じているのか
寝坊なのか

ヒトの
野暮ったい性行動に入る瞬間を思い
急いでそれを打ち消した

肉や野菜を食うものにとって
微かな幕間劇が
舌の裏のように広がり
トケイソウが
花を広げる一瞬の
シャッターチャンスが
ヒトの脳の視覚野に
擬態の皮膚のような色素を
流す

時計は
ぶら下がっている

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(腋毛から発生する(1997.6.10))次頁(捺印される童話(1997.5.27))

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